更新日:2023年04月27日 10:41
エンタメ

小沢健二の軌跡。なぜ人気絶頂で突如として渡米し、日本へ帰還したのか?

結婚、そして父へ…日本での音楽活動を徐々に再開

 2010年、小沢は、実に約13年ぶりとなる全国ツアー「ひふみよ」を決行する。1994年リリースの大ヒットアルバム『LIFE』(1994年)の収録楽曲を中心に披露し、日本で彼を長年待ち続けていたファンたちは歓喜した。このツアーのライブ音源は、2012年に発表された作品集『我ら、時』に収録されており、同作のアートワークもまた、妻のエリザベス・コールと共作したものだ。
『我ら、時』

作品集『我ら、時』ジャケット。ピンク色の星が光る夜空をバックにうさぎ、色とりどりの葉、レコードプレイヤーを描いた幻想的なデザイン

 そのエリザベス・コールと小沢の結婚については、2010年6月に『FRIDAY』が報じているが、小沢の公式ホームページで発表されたのは2012年12月で、正式な時期は明らかにされていない。2人は共通の友人を介して知り合い、芸術や文学の好み、社会についての考え方も似ていたため、すぐに仲良くなったという。  2013年には第1子・凛音(りおん)くんが誕生。名前“凛々しい音”に由来するそうだ。この時期には雑誌の寄稿やライブへの参加など、表立った活動が見られるようになり、国内メディアへの復帰準備がなされていたようにも思える。

シングル『流動体について』発表、活動を本格化

 小沢は2017年、シングル『流動体について』を発売。19年ぶりのシングルということで大きな話題を呼び、夏には大型フェス『FUJI ROCK FESTIVAL』にも出演している。  翌年には、古くからの友人である漫画家・岡崎京子原作の『リバーズ・エッジ』の映画化にあたって主題歌『アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)』を書き下ろし、積極的なリリースが続いた。
『アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)』

『アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)』CDジャケット。ともに表現の世界を戦い抜いた盟友・岡崎京子との友情がテーマになっている

 ヒット曲を連発させた1990年代は個人の内面的な部分、または特定の恋人と2人きりの空間に焦点を当てた楽曲が多かった印象だが、近年は“家庭”“子供”“宇宙”など、他者や世界とのつながりを重んじた詞を歌うことが増えたように思える。  と、ここで、今回のニューアルバム『So kakkoii 宇宙』のリード曲『彗星』の歌い出しを見てみよう。 “そして時は2020 全力疾走してきたよね 1995年 冬は長くって寒くて 心凍えそうだったよね”  このフレーズについて小沢は、雑誌『AERA』のインタビューで「歌詞になっているのは1995年と2020年だけど、本当はその間のことを歌いたいし、捉えたい」と語っていた。  ――“渋谷系の王子様・オザケン”から、現在の“小沢健二”という人間に変化を遂げた彼。メディアと長らく距離を置いていたとはいえ、それは決して空白の時間ではなく、彼なりに“旅”をしながら、理想の表現を追求していたのかもしれない。やはり、“全力疾走してきた”のだろう。<文/福永全体(A4studio)>
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