小沢健二の軌跡。なぜ人気絶頂で突如として渡米し、日本へ帰還したのか?
“オザケン”ことシンガーソングライターの小沢健二が、11月13日にオリジナルアルバム『So kakkoii 宇宙』をリリースし、オリコン週間ランキングで初登場3位を獲得した。彼の新作アルバムの発表は、2006年のインストゥルメンタルアルバム『Ecology of Everyday Life 毎日の環境学』以来13年ぶり。ボーカル入りのアルバムとしては、なんと17年ぶりである。
そもそも、小沢が渡米した理由は何だったのか。2017年に『スッキリ!!』(日本テレビ系)で言及したところによると、彼は“インプット”が好きな人間らしく、日本でメディア露出などの“アウトプット”を続けることに耐えられなくなっていたようだ。
渡米後、しばらくは気ままな生活を送っていたそうだが、2002年には全曲をニューヨークとマイアミでレコーディングしたオリジナルアルバム『Eclectic』を発表する。
本作は、当時アメリカで注目されていた“ビート”の様式から受けた影響が色濃く表出された作風に。しかし、その頃の日本ではあまり馴染みのないスタイルでもあり、キャッチーさよりも新しい技術に挑むことを重視したこの作品は、ほとんど評価されなかったという。
アメリカの音楽様式を取り入れた『Eclectic』の発売から3年後の2005年、小沢は雑誌『子どもと童話』に『うさぎ!』と銘打った連載を始める。『子どもと童話』は、ドイツ文学者である彼の父・小沢俊夫が発行している雑誌だった。
2006年には、冒頭でも触れた全曲インストゥルメンタルのアルバム『Ecology of Everyday Life 毎日の環境学』を発表している。前作に引き続き、“みんなのオザケン”というイメージからの決別を表明しているような仕上がりとなった。
また、同時期に南半球の国々を旅しており、それを記録したドキュメントムービー『おばさんたちが案内する未来の世界 Old Ladies’ Guide to the Future』を、のちに妻となる写真家、エリザベス・コールと共作。上映会が日本各地で開催されたものの、ネットでの情報公開が一切されていなかったことなどにより、ほぼ“幻の映画”のような作品だった。この頃の小沢の表現活動は音楽だけにとどまらず、多角的な視点から表現のあり方を見つめ直していたといえるだろう。
『ラブリー』(1994年)や、スチャダラパーとのコラボ曲『今夜はブギー・バック (nice vocal)』(同)などが大ヒットしたことで、一躍時代を代表するポップ・スターになった小沢。しかし彼はその後、ある時を境にメディアの前から姿を消した。実は、1998年にアメリカ・ニューヨークへと移住し、表現活動を継続しながら家庭を作っていたのだ。
今回は、突如としてアメリカに渡ったのち、現在では日本の音楽シーンへの帰還を果たした小沢の軌跡を追っていきたい。
日本でヒット曲を連発し渡米…新境地『Eclectic』へ
音楽以外の表現分野にもトライし、表現のあり方を見つめ直した時期も?
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