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<純烈物語>リーダーの朝改暮令を率先して面白がれる後上翔太のゲノム<第25回>

「こんな給料じゃ食っていけねえよ。どうすりゃいいんだよ」となっても……

 メンバーが集まり「こんな給料じゃ食っていけねえよ。どうすりゃいいんだよ」といったシビアな状況になり、誰もが険しい顔をして頭に血が昇りかけても目が笑っているのだ。どこをどう切ってもそれは素顔でなく、その下に本音を隠して見せようとしていない。つまり、怪しい。 「家族の方はどうなのかわからないですけど、メンバー・スタッフ含め彼の本音は誰もわかっていないし、これからわかることもないでしょうね。でもそれでいいと思うんです。素顔が見えなくても全然いいし、素顔を見せないから信用できないとはならない。面白いですよね。らしいなと思うことも多々あるし、ある種強いなとも思う。  普通は昨日まで白と言っていたのに、黒とはいいづらいじゃないですか。変えたい場合は、時間をかけて段階を踏んで、徐々に空気を読みながら変えていく。でもメンバー間レベルでは180度バッと変えちゃうタイプだから、今はみんな慣れているけど昔は違うじゃないかと責められた。なのに1ミリも悪びれず『昨日はそう言ったかもしれないけど、今はこう思っているからよろしくな』ですよ。そこで謝らない強さがあるんですね」  朝改暮令を一切悪びれることなくやれる人。それが後上に映る酒井だった。「こう言っていただろ!」という物言いに対する切り返しは「それもおり込み済みよ」か、あるいは「昨日の俺とは違う!」のツーパターン。だから、その時点における主義主張や根底にあるものを曲げることなくいつでもプレゼンできる。  常識的な受け取り方をしたら振り回されている感を覚えてしまうものだが、後上にはそれが面白いと思えた。いや、率先して面白がった。純烈は、やる方も見る方も面白がれる姿勢がなければ骨の髄までは味わえない。 「同世代でそういう人がいたら嫌だった? どうだろう、そういう人がいなかったからですからねえ……あっ、高校の部活の顧問が近かったかな。その人も我が道が強いというか、我が道と世間が合わなくてもいこうとするあたりが似ていました。たとえば、練習や試合での声出しが禁止だったんです。理由は意味がないから。そんなことをやるんだったら集中して、1ミリでも正確なパスを出した方がいいって。  挨拶も体育会系のノリだと『お疲れ様です!』じゃないですか。それを言うと『今は朝なんだから“おはようございます”だろ。そんな挨拶、ほかじゃ通用しないぞ。俺は疲れてなんかないからな!』ですから。他人がどうであろうと、正しいことは正しいと思えるという部分で、リーダーと同じ感じでしたね。進学校なのに、本気で日本一を目指すような先生だったんです」  進学校でバスケットボールの日本一を狙うのと、まともに歌えないおっさんたちが紅白にいくつもりでいるのとどちらが狂っているか。思い返すとあの時、酒井の言ったことはどこかで嗅いだようなにおいをしていた気がする。だからこそ、面白いと思えたのか。  そんなリーダーをつぶさに見続ければ、本人の意識とは別にゲノムは植えつけられる。「あいつはメンバーであるけれども、すでに“こっち側の人間”になっているんですよ」と酒井がしたり顔でほくそ笑むのはそういうことだ。 「メディアにおけるリーダーの発言に関しては、正確な記憶があやふやになっていく中で、徐々に上書きされていくのもいいんじゃないかなという受け取り方をしています。たとえば話をした時にそこへ誰がいたとかは、よりストーリー性があった方がいいんじゃないかと。  リーダーの話を聞いたり見たりした人から、こういうことがあったんですねと言われた時に、ちょっと違うなと思うことはままありますよ。でも、そこで訂正するかしないかは置いといて、じっさいはこうだったという明確なデータは僕の中に残っているんで、それさえハッキリしていれば問題ない。そこは比較的、記憶力はいいんで。だから、流れはいつでもバッチリなんですよ」  このあたりは「後上は俺の議事録」とする酒井の言葉通りなのだと思った。あの頃は、勉強することの意義など考えずにやっていたが、物事を正確にメモリーする形で今も生かされている。純烈も、後上にとっては頑張った報酬というニンジンだった。 (この項終わり。次回は2度目の紅白出場が決まった劇的な瞬間をリポートします) ※<おことわり>この記事は発売中の書籍『白と黒とハッピー~純烈物語』(扶桑社刊)に収録されています 撮影/ヤナガワゴーッ!(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売
純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。
白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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