エンタメ

第555回 1月26日「朗読でバトル!」

・若者がテレビを見なくなったとか本や雑誌を読まなくなったとか、そういうことは末端現象に過ぎない。本質は、再生環境がテレビや雑誌からスマホやタブレットに移り、そこに適合したコンテンツが求められるようになっていることだ。それはたとえば短くてインパクトのある動画だ。ピンと来なければ、スマホを持っている小学生の様子を2、3日観察してみればいい。それが5年後の若者達の、そして10年後の大人達の姿だ。 ・絶滅していく恐竜を横目に繁栄した小型ほ乳類のように、映画もアニメも小説も、新しい環境に向けて適応進化していく必要がある。今のところ、アメリカの動画配信事業者と中国のゲームメーカーはそのためにかなりの先行投資を行い始めている。ユーチューバーは進化形ではなく新種として登場したものだが、既に確固たる生存領域を獲得している。 ・僕は小説家だが、もちろん絶滅危惧種だ。進化オアダイの瀬戸際にいるのである。多様化の道筋の一つとして今「朗読」にフォーカスした企画に参加させてもらっている。出版社「星海社」と、声優事務所「マウスプロモーション」のコラボレーションでスタートしたプロジェクトだ。これまで「ゲーム・キッズ金曜朗読館」「『ゲーム・キッズ徳島マチ☆アソビ朗読館』」「『令和元年のゲーム・キッズ』朗読ライブ」など、ステージイベントやネット配信で行われていて、その全てに作品を提供させてもらった。昨年10月のマチ☆アソビから、「READING × READING」という新企画が始まった。これは声優陣によるバトル形式のイベントである。 ・人気声優が二人ずつステージに登場、同じ長さの超短編小説をくじ引き形式で選び、即座に朗読する。その場で勝敗が決まっていき、トーナメント形式で優勝を争う、というものだ。第1回の優勝者は清水彩香さん。僕は現地に行けなかったのだがとても好評だったようで、第2回の開催が決定した。 (→クリック「READING × READING LOFT9 Shibuya ルーキー声優対決の陣」) 乙一先生と斜線堂有紀先生と僕の3人で、このイベントのために作品を書き下ろした。朗読後、会場では特殊な形でこの小説を販売する予定だ。 ・乙さんや斜線堂さんとはまだ話していないが、これは新しいスタイルの「物語」を開発するための方法論だと思っている。短い作品群を、新しいインフラに対応して続々と生産していくこと。それは文字だけではなく動画や音声で、数分単位で楽しめる形で提供されるべきだろう。映画やアニメでもいいが、イベント性、同時代性をもったビビッドなコンテンツとして生み出すために、声だけで戦う「声優バトル」という形はとても有効だと思う。 ……………………………………………………………………………………………… ※この話題「リーディング×リーディング」について主催者の太田克史さん(星海社)と対談した動画はこちらです↓
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。
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