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第554回 1月20日「『十三機兵防衛圏』を考えること」

・『十三機兵防衛圏』(PS4/アトラス+ヴァニラウェア)についてしつこく喋ったり書いたりしているのは「今」売れてほしいからだ。『ブレードランナー』みたいに何年もかけてじわじわ評価されてカルト作品化しても、制作者は幸福にならない。そして続編が出るのに何十年もかかるのである。興味を持たれたらぜひ今すぐプレイして頂きたい。 未プレイの方へ↓
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・主人公は13人の少年少女たち。主観を切り替えながら、そして1945・1985・2025・2065・2105……と、40年おきの時空を行き来しながら、生き延び、謎を解き、陰謀と戦い、そして地球に襲ってくる怪獣群を巨大ロボットで迎え撃つ。物語はリワインドしたりスキップしたりループしたりながら縦横無尽に広がっていく。DNAクローンされていたり記憶を変造されていたりとキャラクター達は何重ものアイデンティティーを持っていて、その関係性も極めて入り組んでいく。 ・ゲームでなければ描けない構造の物語だが、難解さや複雑さに悩まされることはない。息をもつかさない展開に引き込まれ一気にプレイさせられる。全ての伏線が回収された時、物語の全体像の美しさに打ち震えるだろう。そしてきっと思うのは「こんなに入り組んだストーリーをどうやって書いたんだろう」ということだ。 ・メディア上ではすでに識者やクリエーターからのコメントが出揃ってきている。売上は別にしてこのゲームの評価は固まるだろうが、、今このタイミングに、褒め言葉以外に一つだけ書いておきたいことがある。この作品そして作家が神格化されそれで終わってしまうことへの危惧だ。 ・たとえば『新世紀エヴァンゲリオン』のように、受け手がただひたすら神格化することで消費してしまう。そういうことがあり得るのだ。エヴァはなんでできたの? そりゃ庵野監督が天才だったからさ。で、終わってはいけなかったのではないか。 ・天才という言葉で思考停止に陥ってはいけない。天才の創作物であるからこそ傑作なのは当然だ。僕ら凡人が考えなくてはならないのは、それを普通の人間が才能ではなく努力で作る(パクるのではなく再生産する)方法なのである。 ・『十三機兵防衛圏』のあの物語をどうやったら作れるのか。「一人の天才がものすごい努力をした」で結論を出してしまったら、そこに再生産性はない。フォロワーは多く生まれてもクリエイティビティーを量産しそれを産業化することはできない。思えば日本の創作の現場はそういうミスを繰り返してきた。  黒澤作品はすごいよね、なぜ? だって黒澤明が天才だから。  手塚作品はすごいよね、なぜ? だって手塚治虫が天才だから。 ……ぽん、ぽん、と単発の火花のように傑作が出てそれで終わり。進化の系統図はそこで行き止まる。 ・もちろん天才の作る傑作は量産できないものだ。しかし、それに準ずるA級作品は、システムによって生み出せると信じたい。アメリカは20世紀に、映画でもコミックでも天才の出現後にその仕事を量産化・産業化することに成功している。1990年代、日本のゲーム業界はこの作業を怠ったがゆえにゲーム産業の中心地をアメリカに持っていかれた。そして今、アニメ産業の中心地は中国に持っていかれそうになっている。 ・今のゲームにおいて、だけでなく、文学や映画も含めて世界のSFの潮流において『十三機兵防衛圏』は重要な意味を持つ作品だ。ここから伸びる新しい枝を大事にしたいと、大事にしてほしいと思う。現代中国のSF文学のように、あるいは1950年代のフランス映画のように、そのためには批評家の役割も大切だ。 ……………………………………………………………………………………………… ※お前は考えてるのか。と、聞かれそうだ。はい、必死で考えてますよ。まだ文章にするにはおこがましい段階なのだけど、You Tubeでは少し喋っています↓
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。
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