更新日:2020年01月05日 04:07
エンタメ

第552回 1月5日「アイドル文化の最終進化形」

・一度も再生されることのないCDを販売するシステムによってアイドルビジネスは大量消費型の風俗に進化した。 ・今オンライン上でそれがさらにハイファンクショナル化しつつある。ライブ配信では、明らかに物乞いをしている人々を見ることができる。素人の、時には未成年の少女たちが自室でカメラに向かっておねだりをしているのだ。……ちょっと待て。そもそも「こじき行為」は法的にアウトなのではないのか。あれってどうなってるの? もらっているのが現金ではなくてバーチャルなアイテムだからいいの? そしてそのアイテムをパチンコ屋さんの特殊景品のように使って、つまりネット業者が間に入って換金することで三店方式的に回避してるってことなの? ……うん、つまりはそういうことらしい。 ・僕はアイドルタレントを含むクリエーターやアーテイストが形のない作品を公開することによって投げ銭形式で収益を得ることを強く肯定するし、そういう未来を予想した本を書いたこともある。しかし今、生放送+投げ銭というあまりにも直接的なシステム上で、何か芸を見せなきゃ、そのために研鑽しなくちゃ、という感覚がだんだんとなくなっていく状況に戦慄している。 ・最前線のタレントが芸を失い物乞いに落ちていくという状況は、河原乞食と呼ばれた人々が、販売するモノがないからこそ形のない価値としての芸を磨き上げていった歴史と真逆の流れだ。 ・この10年、多くのレコード会社は握手会商法に乗り、捨てられることを前提でCDを売り続けた。多くの芸能プロダクションは、大量のタレントを無教育無管理のままで送り出し続けた。彼らが踏みならした道に今、無名の、無自覚な人々が殺到しつつある。その先におそろしい落とし穴があることを危惧する。 ……………………………………………………………………………………………… ※この話題「アイドル文化の最終進化形」のライブトークVer.はこちらです↓
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。