更新日:2020年02月05日 16:49
ライフ

“自称”小児性愛者の悩み「自分が犯罪者になってしまわないか恐怖」

再犯防止アプローチで注目される「治療的保護観察」

 それでは、どのようにペドフィリア、とくに実際に性加害を行ってしまった人間へ、再犯防止といったアプローチをすべきなのだろうか。同書が提案するのは、カナダの制度である、「治療的保護観察」を参考にするというものだ。  これは、性犯罪で受刑した者は出所後の保護観察期間中、再犯防止プログラムの受講が義務づけられているというもの。プログラムには薬物療法も含まれているが、同クリニックでも、薬物療法を実施している。 「性的な衝動を抑えられないから処方してほしい」と、自分から希望する患者もおり、薬物療法“だけ”では再犯防止には不十分であるものの、並行してさまざまなプログラムを行うことで、効果が高まることは間違いないそうだ。 カウンセリング 同クリニックでのプログラムは、全員が同じものを行うわけではなく、再犯リスクによって受講するプログラムの密度が変化するという。 「クリニックの受診も考えたいですが……まだ自分は“加害者”ではないですし、『小児性愛障害』の診断基準(通常13歳以下の子どもとの性行為に関する強烈な性的に興奮する空想、性的衝動、または行動が反復する)にも該当しないんでしょう。それなら、受診したいならまずは加害者になってからってことなんですかね」  原田さんは、強いコンプレックスから、無理やり偽悪的に振る舞っているようにも見えた。 「ただ、本を読んだだけで自分の悩みが解決したわけではないですが、自分だけが苦しんでいるわけではないとは思えたような気がします。そのことだけでもよかった」  原田さんは、そう言って話を終えた。  彼のような、世間的にロリコンやペドフィリアとされる人物のことを、気持ち悪いとして片付け、存在自体を見ないようにしてしまうことは簡単だ。しかし、被害者を出さないためには、加害者の心境を知ること、そして、どう対策すればいいのかを知ることが大切になってくるだろう。  同書は、読んでいて性加害者の身勝手さに何度も不快にさせられるし、性被害を受けた経験がある人にとっては、読むこと自体がつらい一冊でもあるため、被害経験のある人にはおすすめできない。だからこそ、実に貴重であると感じられる内容だった。<取材・文/関圭一>
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