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自衛隊員は結婚しても2年間家族と離れ離れの生活を強いられる

新入隊員には原則2年の営内居住義務がある

 なぜ、こんなことになったのでしょうか? 自衛隊のルールについて説明します。 ①隊員は隊法55条に定める通り指定場所に居住する義務があること ②原則2年は営内服務の修養期間として営内に居住しなければならないこと ③即応態勢維持、駐屯地警備、駐屯地の火災に備えて、一定数は駐屯地で待機(=営内 者)しなければならないこと
自衛隊

※陸上自衛隊公式Facebookより

 この手紙の例の場合、ルール①と②により、新入隊員には原則2年の営内居住義務があるため、居住場所は「指定された場所」となります。その後、隊長が特例で営外の官舎で家族と一緒の居住を勧めたようですが、官舎は予算不足のため、古くても修繕や建て替えをしていないところがほとんどです。  今回のケースは、勧められた官舎が古くアレルギー体質の家族は生活できず、官舎費も「民間住宅より割高」で支払えないため諦めたという話です。結局、新婚の奥さんはご実家に帰り、家族は離れて生活することになりました。採用年齢が32歳まで引き上げられたということは、新しく入隊する隊員さんのなかにはこれまで以上に妻帯者と幼児、乳幼児の親がいるわけです。しかし、先に挙げた3つのルールは変わっていません。  自衛官は、自衛隊のルールや基本的な生活習慣を身につけるために入隊直後は教育隊という組織に入ります。教育隊にいる半年ほどの間は、基地内の大部屋で外出許可もなかなか下りない集団生活を送ります。お盆などの長期休暇以外は、宿泊のある外出は基本的には許可されません。教育隊を卒業すれば部隊配属となりますが、(海上自衛隊の艦艇勤務など一部の例外を除き)原則2年は営内居住義務があり、実際には2曹に昇進するまでは部隊内の隊舎に居住しなければならないようです。

採用年齢を引き上げたのに若い隊員を想定したままの制度

 これまでの制度では高校卒業後すぐの若い青年を想定していました。既婚者や乳幼児の子供をもつ隊員も少なかったはずです。大半の若い自衛官はそのルールに従って家族と離れて長期にわたって集団生活を義務付けられています。しかも、営内の生活は職場に拘束されているにもかかわらず、その時間に対する手当はつきません。夜間や早朝の清掃義務にも別途賃金が出るわけではありません。  一般企業であれば、勤務時間を終えても職場に拘束される場合は残業手当や賃金が支払われます。自衛官に勤務時間が終わっても家族と離れて職場に居住する義務を課すのなら、その犠牲に伴う報酬があって然るべきです。営内に家族と同居できる家族用隊舎を作るのが理想ですが……。  一番手がかかる乳幼児の子育てに参加できない父親は、家族のなかの所在が不明瞭になり不幸だと思います。家族間のコミュニケーションを取る時間がない分、離婚や離職といった反発が起きないか心配です。これからこの問題はさらに多発する気がしています。せめて2年間の家族が離れ離れになるご苦労に対して、何らかの報酬を考えてほしいと思います。  自衛官が精神的・経済的に憂いなく安心して任務に励めるよう、制度や生活環境の整備も支援していきたいものです。
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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