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第556回 2月21日「限定的イベントの魅力」

・先週は2つのイベントに出演した。それぞれの内容についてはニュースサイトの記事や、参加された方々のSNS上でのリポートなど、ぜひ参照頂きたい。 →クリック「READING × READING」れポたま!さんの記事 →クリック「『十三機兵防衛圏』プレミアム・トークイベント」4Gamer.netさんの記事 ・2月11日。リデリデこと「READING × READING」は、朗読”バトル”イベントである。今回の出演者は浅見春那さん、川島零士さん、寺田晴名さん、柳原かなこさん。2人ずつ登壇し、同じ作家による同じ文字数の作品をそれぞれ朗読することにより、対決する。 ・乙一先生、斜線堂有紀先生と一緒に僕もここに作品を提供させてもらった。全て書き下ろし、つまりこの日初めて、声によって、この場だけで、世に問われるものである。 ・各声優に対する事前のレクチャーはなく、朗読後に、音響監督の納谷僚介さんから本気のアドバイスが与えられ、しかる後にもう一度読まれる、という流れだった。この趣向が興味深かった。つまり、プロの、本気の現場をリアルに公開する試みだ。 ・現場の緊張感はいわく言い難いものがあった。客席の方々も同じ思いだったはずだ。そして今回は若手の声優さんを起用してのバトルとなったが、彼らがこの現場で、素人目にもはっきりわかるほど輝きを増していく様子に目をみはらされた。 ・作品の制作プロセスには、完成品とは別の魅力がある。ただしそれは完成されたコンテンツのようにパッケージングされてマスに販売されるものではない。このイベントは一つの答えだと思うが、他にも方法はありそうだ。 ・2月16日。『十三機兵防衛圏』(PS4/アトラス、ヴァニラウェア)のプレミアム・トークイベント。このゲームは13人の少年少女が全て主人公となり、膨大な時間軸と空間軸をめぐって謎の解明・戦闘、そして恋愛を繰り広げる、ちょっと前例のないスケールのアドベンチャーゲームだ。僕もかなりハマっているが、何周プレイしてもそのたびに新しい発見が、そして謎が掘り起こされていく。 ・熱狂的なフリークを生み出しているコンテンツだが、そんな中でも選りすぐりの。マニア中のマニアが集まったのがこのイベントである(かなり限定された人だけが応募できる抽選制で、それでもとんでもない倍率だったという)。お客さんも、出演者も、同じゲームを徹底的にやりこんだ人だけの空間である。 ・当然トークはネタバレ解禁の、ものすごくディープで面白いものになり、会場は終始盛り上がった。それだけでなく、このイベントにメーカー側が投下した燃料……情報の質と量がすごかったのである。それは配布されたショートストーリーやQAコーナーでのコメント、さらには会場の壁面に貼られた制作用資料という形で、つまり来場の130人のためだけにまず公開されたわけである。その中に、作品中の人間関係や世界観設定について、プレイヤーの全てを驚かせるレベルの情報があった。案の定、情報はここを起点に一気に拡散され、数時間後には関連の掲示板やSNSは大騒ぎとなった。 ・これら2つのイベントには共通するところが多かった気がして、ずっとそのことを考えていた。両方とも限定イベントで、入場者数もほぼ同じ(百数十人)だったこと。出演者としてもとても楽しめたこと。主催者側も来場者も多くが笑顔だったこと。そしてSNSからの拡散力が大きかったこと、など。 ・どちらも入場者を絞り込んだだけでなく、動画配信も行っていない。この10倍規模で行って収益や宣伝効果を狙っても良い企画だったと思うが、両イベントともにあえてそれをしなかった理由が現場にいたらよくわかって、そこがとても興味深かった。 ・コンテンツの育て方や収益方法は日々変化している。たとえば音楽産業においてはネット時代以降メインの収益方法がパッケージソフト販売からライブ動員に切り換わっている地域もある。ブラジルではライブツアーの前にコンサートが行われる地域の露天商にそのバンドのCD音源を無料でばらまくという戦略があるそうだ。 ……………………………………………………………………………………………… ※この話題「限定的イベントの魅力」のライブトークVer.はこちらです↓
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。
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