更新日:2023年05月24日 14:36
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免疫力を高める「唾液力」とは…インフル予防に効果あり、コロナも?

「うま味成分」で唾液の量を増やす!

 続いて唾液量に関しては、一般的には男女ともに50歳ごろから口の渇き(ドライマウス)が顕著になる。口の中を洗い流す自浄作用を維持するにはある程度の唾液量は必要だし、口の中が乾くとIgA抗体が十分に働けなくなってしまうため、しっかりと量を確保したいところだ。  そのためには耳の下や顎の下、舌の下に存在する大唾液腺を刺激するマッサージが有効だが、ここでは、だしが好きな日本人ならではのアイテムを紹介したい。東北大学名誉教授の笹野高嗣氏が開発した、「うま味ドリンク」である。笹野氏がドライマウス治療のために試行錯誤した末にたどり着いた結論は、きわめてシンプルだ。 「うま味ドリンクとは、水500mlに対して細かく刻んだ昆布30gを一晩水に浸したものです。使い方は、ペットボトルや水筒に入れて持ち歩き、口が渇いたと感じたら、なるべく長い時間ぐちゅぐちゅと味わうように口に含む。唾液を出すための訓練だと思って、一日10回を目安に繰り返してください。ただ、甲状腺の病気を持っている方は要注意。昆布などの海藻類を毎日摂るとヨウ素過剰になり、甲状腺機能を低下させてしまいますから、飲まずに口をゆすぐだけにしましょう」  当初、味の刺激で唾液量を増やそうと考えた笹野氏が試したのは、酸味だった。酸っぱい梅干しを想像しただけで日本人は唾液が出るくらいだから、妥当だろう。 「それが、レモンや梅干しなどの酸味は唾液の分泌効果はあるものの、口内が渇いている人にとっては、ヒリヒリして刺激が強すぎるんですよ。そこで代わりになるものがないか探した結果、昆布がもっとも適当であることに行き着きました。昆布に多く含まれているうま味(グルタミン酸ナトリウム)は、酸味よりも口当たりが優しいだけでなく、唾液の分泌量も持続効果も優れていることが実験で明らかになったんです」  うま味、酸味、甘味、塩味、苦味の5つの基本味の中で、うま味の成績はダントツだ。
唾液量アップに適した味覚は?

笹野高嗣氏が’13年に行なった実験の結果によれば、うま味と酸味は摂取直後の唾液増加量においては互角だが、持続力で大差がついた

「ドライマウスに悩む患者たちに試してみると、だいたい2週間ほどで唾液が自発的に出るようになっていき、8割以上の人が改善されました。唾液というのは、耳の下や顎の下、舌の下に存在する大唾液腺から出るものだけでは不十分で、口の中に広く散在している小唾液腺が非常に大事です。口の中を潤しているのは小唾液腺だとまで言えるのですが、小唾液腺をマッサージすることはできません。味の刺激を用いる必要があるんですよ」  こうして槻木、笹野両氏が唱える唾液力アップの手法を試しても効果を実感できない向きには、歯医者などの口腔ケア専門家への相談をおすすめする。日本人の多くは、欧米人と比べると口の中に無頓着だ。口内への意識の薄さは万病のもとと考えるべきなのだ。

<唾液力を量と質からチェック!>

※唾液量の項目にチェックが3個以上、唾液の質の項目にチェックが4個以上ついた人は、唾液力が落ちている可能性が高い。日々の食生活習慣の見直しや、専門家による口腔ケアが必要だろう 【唾液の量をチェック】 ①500mlのペットボトル飲料を1日3本以上飲む ②食事のとき味噌汁やお茶で食べ物を流し込む ③口の中がネバつく、もしくはパサついている ④気がつくと口で呼吸している ⑤口の中に口内炎などの傷ができやすい ⑥歯磨きをしているのに虫歯が多い 【唾液の質をチェック】 ①朝食を抜くことが多い ②ヨーグルト等発酵食品はあまり食べない ③野菜(イモ類)はほとんど食べない ④冷たい飲み物や食べ物をよく摂る ⑤どちらかといえば早食いである ⑥脂っこいものや肉が好き ⑦外出するよりも家にいることが多い ⑧散歩など軽い運動でもほとんどしない ⑨便秘、下痢になりやすい ===== 【槻木恵一氏】 神奈川歯科大学副学長。専門は唾液腺健康医学など。著書に『ずっと健康でいたいなら唾液力をきたえなさい!』(扶桑社)ほか多数
槻木恵一氏

槻木恵一氏

【笹野高嗣氏】 東北大学名誉教授、医療法人明徳会理事長。専門は味覚障害、ドライマウス治療。独自に開発した「うま味ドリンク」は世界から注目
笹野高嗣氏

笹野高嗣氏

取材・文/福田晃広・野中ツトム(清談社) イラスト/野田裕也(清談社) ※週刊SPA!3月10日発売号「唾液力の鍛え方」特集より
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ずっと健康でいたいなら唾液力をきたえなさい!

免疫力の強い身体は「唾液」で決まる


週刊SPA!3/17号(3/10発売)

表紙の人/ 藤田ニコル

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