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コロナ報道の最前線にいる記者たちの不安「自分の感染が発覚したら…」

 日本国内のコロナウイルス感染者は増え続け、19日午前中の時点(※執筆時)で923人。 横浜港に着岸したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」内の乗客乗員の感染者712人と合わせると約1600人を数える。死者数は32人、クルーズ船の7人を含めると39人となる。連日の報道で国民の不安は募るばかり。
報道陣

※画像はイメージです(以下同)

 一方、そんな報道を扱う最前線の現場からも、次のような声が漏れ始めている。 「もはや(報道に関わる)我々の誰が感染してもおかしくないというレベル。北京や上海などの中国支局駐在記者は、日本国内に帰ってこられない状況となり、韓国、東南アジア、ヨーロッパ支局駐在員も、感染拡大とともに、孤立状態となっています」  こう話すのは、大手紙社会部記者・藤田恭平さん(仮名・30代)。じつは……というより当然、コロナウイルスの感染を恐れているのは一般市民だけではないのだ。

コロナ報道の最前線にいる記者たちの本音

 大手通信社・共同通信の記者数名が、コロナウイルス陽性反応だった運転手のハイヤーに乗車し自宅待機となったり、さらには日本テレビの記者、スタッフも発熱と体調不良により出社停止を余儀なくされたという一部報道があったが、現時点ではいずれも「シロ」。  コロナ関連取材で言えば、報道記者はコロナ陽性を疑われるも検査結果は陰性、といった人々へ会いに行くこともあったといい、たしかにいつ誰が感染してもおかしくないという状況だ。藤田さんが続ける。 「出社時は必ず玄関で手の消毒、トイレに行けばうがいや手洗いを欠かさぬよう通達が出ています。社内のトイレに設置されたハンドドライヤーも“飛沫感染防止”のために全て使用禁止。外回りの記者が社に帰ってきて咳き込んでいたとして、騒動の初期の頃には飛び交っていた『お、コロナか?』という冗談も、そろそろ通じなくなってきている」  とはいえ、クルーズ船を含めた国内の感染者と死者を比較すれば、約42人に一人が亡くなっている(1635人:39人)、という計算になり、コロナウイルスの死者のほとんどが、すでに重篤な別の病気に罹患していた人、もしくは免疫力の弱い高齢者であることを考えれば、果たして本当に恐れらるべき病気なのか。  厚生労働省の発表によれば、2018年・2019年にインフルエンザが原因で亡くなった日本人は3000人を超えるというデータもある。新型コロナウイルスが「本当に恐ろしいウイルスなのか」と疑義を抱く記者も存在する。 「インフルの死者約3000人は、あくまでもわかっている数字。罹患者は30万人というデータもありますから、単純計算で約100人に一人です。しかし、こちらの死者も多くが高齢者や重篤な病気の罹患者。仮に私が新型インフルに罹患したところで、そこまで慌てふためく理由があるかというと、そこまでではないと思っています」  民放テレビ局社会部デスクがこう話すように、毎年猛威を振るうインフルエンザと比較しても、「新型コロナウイルスが恐れらるべき理由はそう多くはないのではないか」と考える人もいるのだ(もちろん、感染者と死者数を比較したに過ぎず、事情はそこまで単純ではないのだろうが……)。  不安があるとすれば「確実な治療法、ワクチンが発見されていない」(民放社会部デスク)からだと言い、現状は風邪と同様に、若い罹患者であれば自宅静養などで回復に至るのを待つのみなのである。
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記者ならではの懸念「感染が発覚して取材先が公になると…」
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新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。

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