ヤクザ取材の裏事情。理不尽すぎるクレームに…
―[修羅場の突破術]―
世の中には修羅場でメシを食っている人もいる。実話誌はヤクザ記事が売りだが、その制作現場は過酷を極める。業界歴20年の記者A氏はこう嘆く。
「もっとも多いトラブルは、親分の名前の表記ミスや、写真の取り違え事故ですね。雑誌の発売日にかかってくる電話はドキドキしますけど、『なめてんのか!』などの荒い口調で始まる電話は、チンピラのうさばらしのケースが多いです。いちばん怖いのは、静かなトーンで組織名と役職と名前を告げてくるパターン。本気の要求なんだなという気配がビンビン伝わってきます。とにかく相手の言い分を聞いてひたすら謝るしかありません」
記者側に落ち度がある事故ならまだしも、ヤクザのクレームには異常に理不尽なケースがある。
「記事の内容が違うって言うんですよ。抗争で、ウチが被害を受けたと書かれたが、それは嘘だと。いや、警察発表だとお宅の本部に銃弾が……と反論してもダメ。要は、自分の組織がやられたと書かれるとメンツにかかわるということ。やむなく訂正記事を出してますよ」
当然、現場での取材中も危険と隣り合わせだ。
「彼らは商売柄、怒ったように見せるプロなので、口調や表情だけでは内心が窺えません。本気で怒っているのかシャレで悪態をついているのかわからないですから、とにかくにこやかに接することが大事です。この業界に入った記者は、先輩から『笑顔にパンチは当たらない』と必ず教わっていますね」
カタギ相手のトラブルでも通用しそうな至言である。
<取材・文/週刊SPA!編集部>
この特集の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ