更新日:2020年04月18日 02:09
エンタメ

第560回 4月18日「寝て暮らしても良い人々」

・コロナ禍を奇貨として社会のデジタル化と効率化が劇的に進んでいる。ただし全ての騒ぎが過ぎた後、多くの企業において、労働者の数は今の半分くらいでも十分だということが明白になってしまうだろう。どうしてくれるのだ。 ・いずれにしてもこのまま文明が進んだら、人類の1割程度しか働かなくていい世の中になることは間違いない。その先は、働かなくてもいい人達が「働いた気」になる仕事をわざわざ作る、という方向に進む可能性が高い。穴を掘ってはすぐ埋める、みたいな無駄な仕事を、いかにも意味のあるようなことに見せかけながら、でっち上げるわけだ。これは実にくだらないことだ。 ・働かない人達を社会の中で一定数維持する方法を、そういう人たちの生活、だけでなく生きがいを保証する社会システムを、考えなくてはならない。もちろん無条件に生活保護費を出すことは不可能だろう。 ・勤労意欲が無い人達を、遊び暮らしてもらいながら社会に組み込むための施策として、たとえばこういうのはどうだろう。まず、GPSや監視カメラからの行動トレースを受け入れてもらう。つまり企業が生産や流通の参考にするためのプライバシー情報を提供させるわけだ。さらに、定期的に血液を、あるいはニーズが出れば骨髄液や頭髪などを提供させる。もちろん死後の臓器提供は確約してもらう。 ・つまり文字通り「人材」として活用するのだ。シミュレーションが必要だが、これくらいで、健康で文化的な生活を送るために必要な最低限の給与=ベイシック・インカムはまかなえると考える。人権がどうのことのと言われるかもしれないが、普通の仕事がどうしてもできないという人たちは一定数、存在する。こういう役割を得て、充実感をもって生きていけるようになるのではないか。自殺も減るだろう。そして、寝て暮らす日々の中で、何か価値のあるものを発明したり創作したりする人も現れるのではないだろうか。 ・医療用の血液を生産し続けるなどの役割を維持するには、もちろん健康に生きてもらわなくてははならない。提供してもらうプライバシー情報は、その確認のためにも用いられるだろう。 ・江戸時代、長屋の家賃は激安、タダというところもあったそうだ。家主は、店子の糞尿を「肥やし」として農家に売ることで収入を得ることができていたからだ。江戸の町人は相当ななまけものでも、ホームレスになることだけはめったになかった。そういう状況の中で独特の文化がはぐくまれたのである。 ……………………………………………………………………………………………… ※この話題「寝て暮らしても良い人々」のライブトークVer.はこちらです↓
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。
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