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「中国のコロナ対応をほめる決議を」と米議員にメールした、中国当局の失敗

地位を高めたい中国政府の、致命的なオウンゴール

 同様の働きかけは、ドイツにもなされている。AFP通信が4月12日に報じたところによると、<ドイツ政府の高官や職員に対して、コロナ危機への中国の対応について肯定的な評価をするようにとの働きかけがあった>という。ドイツのディヴェルト紙は、<中国政府は、コロナウイルスに関して強力な情報、広報戦略を展開している>とする、ドイツ情報当局関係者の話を紹介している。  ともすれば内政干渉とも受け取られかねない一連の働きかけを、アンデルリーニ記者は、こう切って捨てる。 <コロナ危機に乗じて、世界的な地位を高めようとする中国政府の致命的なオウンゴールに他ならない。>  加えて、ウイルス感染拡大にともない、広州のアフリカ系住民への差別的な対応も問題視されている。症状もないのに隔離されたり、家を追い出され、路上で過ごさざるを得ないアフリカ人があふれているというのだ(「中国人のむごいアフリカ人差別、コロナ禍で露骨に」福島香織、JB Press 4月16日より)。
スペイン病院

スペイン、コルーニャの病院。同国政府は3月末、中国メーカーから買った検査キットのうち約6万個の不良品を返品した(C)Iago Lopez

 さらにはEU各国支援のために送った検査キットやマスクに相当数の欠陥品があったとして、送り返される始末。本来ならば、ウイルス被害の第一の当事国として速やかに情報を公開し、解決策を提示すべき立場なのにもかかわらず、他国にプロパガンダの片棒を担がせようとする本末転倒ぶり。  本当に自国ファーストなのは、どこなのだろうか?

メールをもらった米議長、逆に中国政府への非難決議案を提出

 さて、もともとは中立派だったウィスコンシン州のロス議長だが、前出のメールの件ですっかり中国政府を敵視するようになったという。コロナ対応を称賛する声明の代わりに、<中国政府の残忍な実態と、ウイルスを隠ぺいしたことで全世界に甚大な被害を与えた事実を白日のもとにさらす>非難決議案を提出したのだ。  ただし、そこには中国国民を鼓舞する文言も加えられていた。打倒すべきは、あくまでも中国共産党だからだ。  果たして、コロナ危機は中国政府にとって好機となるのか、それとも落とし穴となるのか。“大国”としての振る舞いに注目したい。 <文/石黒隆之>
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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