コロナ疎開で感染爆発の沖縄。3月の空港は繁忙期以上の混雑、GWも数万人規模…
沖縄がとうとう爆発寸前だ。筆者は、11年前に東京から沖縄に移住したナイチャー(県外出身者)であるが、ここ10日間で沖縄本島の激変ぶりに戸惑いを隠せないでいる。世界が一変した感じである。
新型コロナウイルス感染症を巡って、沖縄県内で感染者が初めて確認されたのが2月14日。そこから一か月の間、感染者数は3人で留まっていた。この時点で、私は知り合いの編集者たちに「感染を食い止める方法と同時に、本来なら中国人を乗せたクルーズ船が何十隻も寄港していた沖縄がなぜ感染爆発が起こらないかきちんと検証するべきだ」と強く進言していたが、願い虚しく、今の沖縄は爆発寸前。いや、もう爆発しているのかもしれない。4月に入った途端、急激に感染者数が激増したのだ。事象が起こる時は、必ず経過と原因がある。
3月26日に玉城デニー知事は、感染経路の移入例確認が相次いだため県外旅行自粛を要請した。しかし、それでもまだ沖縄県内の雰囲気は安穏としていた。日本中がコロナ感染拡大阻止を目指していた3月は海外旅行を取りやめる人が続出。そこで今年の3月に卒業する内地(本土)の大学4年生たちが卒業旅行として目をつけたのが、日本最南端の島“沖縄”である。感染者がひとりもいない石垣島、宮古島はまさにうってつけの場所だったといえよう。
実際、竹富島では2月の入域観光客数が前年より3058人増の8万2582人と急増。3月に入ると定期船1隻では対応できなくなり、追加便を出すことになるという大盛況ぶりだ。石垣空港には連日3000人近くの人が押し寄せ、若者でごったがえしていた。さらにその多くは滞在日数が1週間近くいる若者グループだったという。
3月27日の夕方、筆者は所用で那覇空港へ行ったのだが、その光景には驚きを隠せなかった。夏の繁忙期以上にウジャウジャと人がいるのだ。そのほとんど若者グループか家族連れで、オマケに半数以上はマスクなし。地元のテレビで、八重山(石垣、宮古)が若者たちの旅行客で溢れんばかり……という報道を目にはしていたものの、まさかこれほどまでとは思わなかった。
地元、沖縄の人々も感染に関して危惧はしていた。それでも沖縄はうまく封じ込めているから大丈夫だと何の根拠もなく思っていた。また、対岸の火事のように首都圏のコロナ騒動をどこか他人事のように見ていたのも事実である。しかし、筆者はこの那覇空港の浮かれた観光客があふれんばかりにいる光景を目にした時は、さすがに一抹の不安を感じずにはいられなかった。そして、沖縄県民にとって懸念していたことがもうひとつあった。米兵たちの動向だ。
3月28日、嘉手納基地のエアフォース2人が感染したと発表。31日には米兵の家族の1人が感染したとし、軍関係者に3人の感染者が出たのである。しかし、それ以上の報告は現在なされていない。沖縄には、米軍人が2万6000人弱、軍属が2000人弱、その家族が2万人弱と、計4万8000人弱の軍人とその関係者が住んでいるのだが、全てが基地の中に住んでいるわけではない。オフベースと呼ばれる基地の外に住んでいる軍関係者も何割かいる。感染者がたったの3人で済んでいるとは到底思えない……というのが、地元の沖縄県民の考えである。
そんな沖縄県民の不安をよそに3月30日、米国防総省は新型コロナウイルスの米軍内における詳細な情報は今後すべて非公開とする方針を公表。これは沖縄の米軍基地にも適用するというのだ。ここから沖縄におけるコロナに対する風向きが変わってきた。
4月2日、仕事の打ち合わせを兼ねて那覇の繁華街久茂地に出向いたのだが、この日辺りから人の出歩きが急に減った感じがした。だが、あるクラブを覗いてみると、身動きができないほどの外国人で溢れかえっていた。平日なのに、これだけの外国人が那覇に集まること自体、異様であり、皆がラリっているかのように奇声をあげまくり、まさにカオス状態。これが、クラスター感染源なのかと思い、気持ち悪くなってすぐに逃げ帰った。その週末から、那覇の繁華街はさらなる自粛ムードとなった。
とにかく県民は八重山や離島で感染者が出ないことだけを祈っていた。しかし、その切なる願いもむなしく4月13日に石垣島で2人の感染者が出てしまったのだ。
昨年よりも観光客が増加した離島
在日米軍の感染者情報は非公開
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1968年生まれ。岐阜県出身。琉球大学卒。出版社勤務を経て2009年8月より沖縄在住。最新刊は『92歳、広岡達朗の正体』。著書に『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)、『第二の人生で勝ち組になる 前職:プロ野球選手』(KADOKAWA)、『まかちょーけ 興南 甲子園優勝春夏連覇のその後』、『偏差値70の甲子園 ―僕たちは文武両道で東大を目指す―』、映画化にもなった『沖縄を変えた男 栽弘義 ―高校野球に捧げた生涯』、『偏差値70からの甲子園 ―僕たちは野球も学業も頂点を目指す―』、(ともに集英社文庫)、『善と悪 江夏豊ラストメッセージ』、『最後の黄金世代 遠藤保仁』、『史上最速の甲子園 創志学園野球部の奇跡』『沖縄のおさんぽ』(ともにKADOKAWA)、『マウンドに散った天才投手』(講談社+α文庫)、『永遠の一球 ―甲子園優勝投手のその後―』(河出書房新社)などがある。
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