仕事

テレワークで“オレの時間”が消えた…アフターコロナが不安な人たち

家族に“残業”と偽ってネットカフェに通っていた

悩み 外資系保険会社で代理店営業を担当する下山祐一さん(30代・仮名)。3人の子宝に恵まれ、夢のマイホームも手に入れた。だれもが羨むような何不自由のない暮らし。真面目で家族思い、まさに“理想のパパ”そのものだが、その裏では見えない苦労もある。 「20代半ばで結婚してすぐに長男ができた。それから年子で次男が生まれ、今は三男もいる。結婚後、妻は会社を辞めて専業主婦になりました。家事や子育ての負担を減らしてあげようと、私が家にいるときは土日も含めて自分がやらなければいけないと思っています。でもやっぱり、仕事と家庭ばかりでは、胸が苦しくなることがあって……」(下山さん、以下同)  仕事では部下を抱え、家庭では良きパパとして努める。気を抜く暇がなかったのだ。そんな下山さんは数年前から、ある場所に通っていたという。 「じつは、これまでは妻に“残業”と偽って、週に1回はネットカフェで“ひとりの時間”をつくっていたんです。ダラダラと漫画を読んだり、ぼーっと過ごしたり。こんな姿はだれにも見せられませんね。ただ、それが唯一の癒しでした」  テレワークとなってから、それも不可能になった。休校で時間を持て余した子どもたちが時折、部屋で仕事中の姿をのぞきにくる。出社する機会もあるが、馴染みのネットカフェは緊急事態宣言に伴い休業となった。  こうして下山さんは逃げ場を失ってしまったのだ。 「今は対面の仕事や移動時間が減り、そんなに忙しくありません。夜遅くまでやらなければいけないこともない。妻は『テレワークになって良かったね。残業なんていらなかったんじゃん』と喜んでいるのですが、今後も続くと考えると、個人的には気が滅入ってしまいます」  コロナが収束した後の“アフターコロナ”の生活に対して不安の声もある。テレワークがもたらした恩恵のひとつとして、仕事の可視化がある。業務が効率的になる一方、会社や家族に対して、余白の時間が浮き彫りにしてしまった。下山さんや前出の佐伯さんの行動は、一見すると“無駄”。きっと今後も削ぎ落とされてしまうはずだ。しかし、本人たちにとっては貴重な時間だったに違いない。  コロナうつの原因はさまざまだが、じつは会社や家族に言えない秘密が関係しているという人も少なくないのである。たとえアフターコロナが訪れても気分は晴れないのかもしれない。<取材・文/藤山ムツキ>
ライター・編集者。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』(共に彩図社)など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ【最新版】』(辰巳出版)がある。Twitter:@gold_gogogo
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