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テレワークで“オレの時間”が消えた…アフターコロナが不安な人たち

 テレワークやリモート会議が多数の企業で普及し、そもそも出社して仕事をすることや通勤・移動時間などは全て無駄だったのではないかという声もある。現在、東京などをのぞき、全国の多くの地域で緊急事態宣言が解除されたが、今後もあらゆる業務の効率化・オンライン化が進められていくはずだ。
悩み

※画像はイメージです(以下同)

 そんな“アフターコロナ”に対して「あの日常は戻らないのではないか……」と不安を吐露する人たちがいる。じつは彼らには、会社や家族に言えない“秘密”があったのだ。

“禁煙”を装っていたが、タバコを吸うチャンスが消えた

「テレワークになってから、タバコを吸えないことが苦痛です」  東京都でWeb関係の仕事に就く宮下恭平さん(30代・仮名)が、電話越しにも伝わる音量でふうっと溜め息をつく。タバコぐらい好きに吸えばいいじゃないか、むしろ現在は禁煙の会社や施設が多いなかで自宅なら吸い放題……と思ってしまうが、そうはいかないらしい。  じつは宮下さん、数年前から家族に対しては“禁煙”していることになっていたのだ。 「今は24時間、妻と子どもと一緒に過ごしているので。散歩やコンビニに行くときだって子どもがついてきてしまうので、まったくタバコを吸う隙がありません」(宮下さん、以下同)  愛煙家だった宮下さんは妻の出産を機に、禁煙を強いられた。本人はもちろん、妻や生まれてくる子どもの健康面を理由に、親族からのプレッシャーもあったという。しかし簡単にはヤメられなかったのだ。 「20歳の頃から1日一箱を吸い続けてきたので、もう毎日のルーティンになっていて。会社や外出先では吸っていましたね。本当にヤメようと思ったこともありますが、無理でした。洋服の臭いで疑われても上司や得意先との打ち合わせで喫茶店に入ったことにしていました。ヤニで黄ばんだ歯を白くするために、半年に一度は歯医者でクリーニングしてもらうなど、なんとかやり過ごしてきましたが……」  過去には飲み会後、スーツのポケットにうっかりタバコを入れたままにしてしまい、不自然なふくらみを怪訝に思った妻にバレてしまったことがあるという。小遣いを減らされるなどペナルティを受けながらも、それでもこっそり吸い続けてきた。しかし、現在はテレワークが基本となり、家族の監視下でタバコを吸えないストレスから毎日イライラが収まらない。妻とも些細なことで喧嘩が増えたという。 「ゴールデンウィーク明けに出社したときは、本当に開放された気分で天国でした。連続で2本吸ったらクラクラしちゃいましたよ。早く緊急事態宣言が解除されないかな。このままだと、家族にも優しくできないよ。あ、細かい部分はLINEで!」  急にプツリと電話が切られた。どうやらお昼寝中の子どもが目を覚ましてしまったらしい。宮下さんの苦労が伝わってくる。

“決められた業務以外”も重視していた

悩み 広告業界はいま、自粛ムードのなかで打撃を受けている。広告・PR関係の会社に勤める佐伯裕太さん(30代・仮名)によれば、媒体への広告出稿の中止が相次ぎ、イベントなども安易に打てなくなったという。佐伯さんは「言い訳かもしれませんが」と前置きしたうえで、最近は良いアイデアや企画が浮かばずに困っていると嘆く。 「仕事柄、いろんな人と会って話すことが重要でした。外出自粛のなか、現在はZoomなどのビデオ会議アプリが定着したおかげで、クライアントとの打ち合わせには困っていません。コロナ禍の当初はどうなることかと思いました。会社の業績も落ちていますが、個人的にはなんとかなるかなって。とはいえ、どこか物足りなくて……」(佐伯さん、以下同)  仕事としてのミーティングなど、実務に直結する部分で言えば、テレワーク体制となっても対応してきた。そんな佐伯さんだが、じつは“決められた業務以外”も重視していた。 「街を適当にブラブラしたり、うちとは関係なさそうな人ともお茶してみたり、時にはキャバクラに行ったり(笑)。『仕事』として身構えてやるより、気楽にいろんな店を眺めて、とりとめもない雑談をするなかでヒントをもらうことも多かったんですよね」  佐伯さんが「たぶんみんなそうですよ」と話すように、職場の同僚たちにも似たような側面があり、黙認されていた部分があるという(もちろん、そんなこと家族には内緒にしている)。  だが、コロナウイルス感染拡大防止から自粛ムードが強まるなかで、おおっぴらに外を出歩くことなど出来なくなった。営業再開する店も出てきているが、たとえ冗談でも「キャバクラ行きました」などとは言えない。そんな閉塞感にゲンナリしているようだ。
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家族に“残業”と偽ってネットカフェに通っていた
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