ライフ

JR時刻表を使った“妄想鉄道旅”が面白い。移動自粛でも旅立てる

鉄道ミステリー小説のトリックを妄想してみる

 ほかにもこんな楽しみ方もある。西村京太郎をはじめ、鉄道を舞台にした推理小説は数多く、2時間サスペンスなどドラマ化された作品も珍しくないが、作品では時刻表をヒントに生まれたトリックがよく用いられている。そのトリックを物語に登場する刑事になった気分で解き明かしていくのだ。  例えば、仮に以下のようなストーリーがあったとする。 《都内で殺人事件が発生。捜査線上にはある女性が浮かんだが、彼女は東京駅発出雲市行きの寝台『サンライズ出雲』に乗車。犯行推定時刻とされる深夜には都内にいなかったというアリバイが証明されている》  実際に時刻表で調べてみると、この列車の東京駅の次の停車駅は横浜駅で22時23分着。この時間ならまだ電車で都内に戻ることができる。その先の熱海駅は23時21分着で終電が出てしまった後だがタクシーを使えば十分可能だ。  また、時刻表には航空ダイヤも載っており、羽田発出雲行きの始発の飛行機は7時10分発。これに搭乗すれば8時35分に到着し、出雲空港からタクシーを利用すれば出雲市駅の1つ前の宍道駅、もしくは2つ前の松江駅からサンライズ出雲に乗車することが可能。つまり、アリバイは崩れることになる。  交通機関のダイヤはほぼ毎年改正されるうえ、廃止となった特急などもあるため、当時は有効だった鉄道ミステリー小説のトリックが現在は成立しない場合もある。その辺も含めて小説を読みながら調べてみるのもきっと面白いはずだ。  しばらくは遠出を控えなければならず、自由に旅行できる状況ではない。だからこそ気兼ねなく楽しめる時刻表での妄想旅に出発してみてはいかがだろうか。<TEXT/高島昌俊>
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。
1
2
おすすめ記事