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ミスチル桜井、長渕剛クラスの歌手がバトルに負ける…ガチすぎる韓国リアリティショー

素人の参加者にも高いクオリティを求める

コンサート

※写真はイメージです

 日本と韓国のオーディション番組は、どの点が違うのか? ピョ・ジェシク氏によると一番の差は、韓国の視聴者が出演者にプロフェッショナリズムを求めるところにあるという。「実力がない奴は出てくるな!」という考えが厳然と存在し、日本のように「成長過程を見守る」という文化が根付いていないのだ。これはアイドルで特に顕著といえるだろう。 「僕は『PRODUCE101』シリーズ(Mnet)のプロデューサーだった人と個人的に知り合いなんですよ。今、彼はテレビとはまったく別の仕事をしているんだけど、日本の芸能界とかテレビのことも詳しい人なんですよね。それこそ『ASAYAN』とかモーニング娘。結成の経緯とかも理解していましたから。  だから日本式のオーディション番組をMnetでやりたいという話は前からしていたんです。『まだタマゴみたいな状態の若者を番組で追っていきたいんだ』とね。ところが社内の上層部からは、すさまじい反対に遭った。『クオリティが低いものを出すのは視聴者に対して失礼だろ!』というわけです」(同)  なるほど。言われてみれば、たしかに『PRODUCE101』はどこか日本に近いテイストがあったようにも思う。セミプロのような出演者が多かったものの、番組内では初々しい雰囲気を漂わせていた。 「初期はまだよかったんですよ。出演者が素人とはいえ、練習はきちんとこなしていましたし。ところが、そのあとで始まった『PRODUCE48』ではAKB48グループを取り上げましたよね。AKB48はモーニング娘。なんて比べ物にならないくらい素人感丸出しなわけですよ。  もちろんパフォーマンスのクオリティが高くないこともAKB48の魅力なんだけど、そんなこと韓国の人たちが理解できるはずないじゃないですか。『なんですでにデビューしているAKB48のメンバーが、歌やダンスでは韓国人の練習生よりはるかに下なの?』ということが単純にわからない。  ただ、あの番組で最終的に証明したのは、AKB48だってきちんとした先生のもとでちゃんとレッスンすれば素晴らしいクオリティになるということ。そこにはシステムの違いがあっただけで、彼女たちのポテンシャル自体は非常に高いと個人的には感じました。  それと韓国の視聴者もここに来てようやく“成長する過程を観て楽しむ”ということができるようになったのは大きかったですね。ある意味、韓国人がAKB48によって教えられたというか……」(同)  審査員を視聴者にしたことも『PRODUCE101』シリーズの大きな功績だった。番組内では視聴者のことを「国民プロデューサー」と呼んだが、AKB48グループの選抜総選挙が定着している日本と違い、専門家以外が合否を決めること自体がエポックメイキングだったのだ。  しかし、この新システムは「やらせ問題」「不法投票」というパンドラの箱を開けることに繋がった。その後、『PRODUCE101』が韓国テレビ界を震撼させるような一大疑獄事件へと発展したのはご存知の通りである。次回は「なぜオーディション番組で過剰演出が蔓延するのか?」「なぜリアリティーショーは完全なリアルになりえないのか?」という疑問点に踏み込んでいきたい。
出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。
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