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ゲーマー、演歌歌手、女子アナ、犬…韓国テレビが何でも競わせる危ない事情

ドッグコンテスト

写真はイメージです

ひょうたんからコマのトロット(韓国演歌)ブーム

 Mnetで制作された『スーパースターK』の人気が沸騰し、韓国ではサバイバル系オーディション番組が粗製乱造されるようになった。しかし、熱しやすく冷めやすいのが韓国人の国民性。ブームが一段落すると、今度はアイドル以外のジャンルを取り上げるようになる。  そんな中で抜けた存在になったのが『SHOW ME THE MONEY』(Mnet)だ。これはヒップホップに特化したオーディション番組。日本の『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)をイメージしていただければ伝わりやすいかもしれない。  ヒップホップという音楽の性質がバトルに向いていることもあり、また昔から韓国ではラップの人気が高かったこともあり、番組は高視聴率を記録した。同番組からは女性ラッパーを素材にしたスピンオフ番組『Unpretty Rapstar』(Mnet)も誕生。コンテンツ供給会社兼芸能プロダクションのJAKE社長であるピョ・ジェシク氏が解説する。 「やっぱりテーマが大事なんですよ。『SHOW ME THE MONEY』の成功を受けて、それまでなかったスタイルの音楽オーディション番組が作られるようになりました。たとえば『あなたがすぐにボイスクイーン』(MBN)。  これは『若い頃は歌手を目指していたけど、夢破れて今は普通のおばさんをやっています』みたいな主婦が次々と出てくるんです。出演者にはバツイチの人もいて、年齢は30代から60代までバラバラ。一度は引退した人たちが再デビューを目指す『アイドルリブーティングプロジェクト「The Unit」』(KBS)も似たようなアプローチと言えるでしょう」(ピョ・ジェシク氏)  昨年から放送が始まった『明日はミスター・トロット』と『明日はミス・トロット』(共にテレビ朝鮮)は、総合編成チャンネルながら30%を超える高視聴率をマーク。ちょっとした社会現象となっている。トロットは韓国版の演歌なので、基本的には中高年向きの音楽だ。それまでのオーディション番組が若年層をターゲットにしていたのとは対照的だった。 「とは言っても、最近は20代~30代のトロット歌手が増えてきているんです。中には“トロット系アイドル”みたいな歌手もいますし。だから結果的にはお年寄り向けの番組という感じにもならず、むしろ家族一緒に番組を観て、コンサートにも二世代・三世代で足を運ぶといったケースが多い。  韓国では毎日ミュージックチャートが出るんですけど、ちょっと前まではトップ100の中にトロットなんて1~2曲あればいいほうだった。それが今では20~30曲入っていますからね。ただ、この現象は“サバイバル系オーディション番組ブームの再燃”というよりも“トロット再評価の波”という見方ができると思います」(同)
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作曲家もデザイナーも競わせる
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出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。

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