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韓国の視聴者は“やらせ”を許さない。プロデューサーは裁判にかけられ実刑判決

リアルと演出の狭間で…

 現在、Mnetは懲りずに『I-LAND』というアイドル育成番組を放送しているが、視聴率はまったく振るわないうえに評判もすこぶる悪い。やらせ問題が『PRODUCE101』であったため、合否を判断するのは審査員でも視聴者でもなく他の参加者というシステムを敷いているのだが、そんなのどだい無理な話である。  参加者同士には先輩・後輩の関係もあるし、プライベートの友達もいるし、そうなると忖度だって働く。「この中でダンスと歌が上手いと思った人に手を挙げてください」と言われたところで、そこには冷静さもなければ、正義も存在しない。 「なぜ、それでも韓国人はオーディション番組を求めるのか? 結局、スポーツと構造的には同じだと僕は思うんですよね。つまり人々は“結果がわかならいもの”にこそ興奮するということです。  実際、韓国テレビではお笑い芸人の活躍する場が年々減っているんですよ。日本みたいなコント番組もなければ、漫才を披露するようなネタ番組も久しく登場していない。だから、お笑い芸人もリアリティーショーで活動するしかないんです。田舎で暮らしたり、ジャングルでサバイバルしたりして、リアルっぽい様子を視聴者に提供していく。  でも、リアリティーショーって放送作家が書くものじゃないですか。どこまでいっても演出が大前提にあるんですよ。リアルっぽくしているかもだけど、純然たるリアルにはなり切れない。リアルじゃないということは、要するに緊張感がない。  よりヒリヒリとした番組を求める視聴者は、田舎で芸人が畑を耕す姿よりもアイドルが歌やダンスで傷つく姿を観たいと願う。『しょせんリアリティーショーなんて作られたドラマ。サバイバル系オーディション番組だけが真のリアルだ』と信じているわけです。だけど、そこに不正があったら……やっぱり『騙された!』という怒りも倍増するわけですね。これはもう本当にテレビというメディアの宿命。おそらくこれからもずっと続いていく問題でしょう」(同)  いかがだっただろうか? これまで6回にわたって韓国サバイバル系オーディション番組の光と影に迫ってきたが、『Nizi Project(虹プロ)』や『PRODUCE48』だけではわからない実態が掴めたはずだ。必要以上に過剰さを求めるメディアの演出や、ネチズムと呼ばれるネット住民からの執拗な攻撃で出演者が精神を病む現象は韓国社会が早急に解決すべき課題。他方で日本のテレビ業界も他山の石として受け止めなくてはいけない面が多々あるのも事実だろう。ガチ志向とドラマティックな演出の狭間でオーディション番組の制作現場は揺れ続けている。
出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。
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