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韓国の視聴者は“やらせ”を許さない。プロデューサーは裁判にかけられ実刑判決

テレビを見る韓国人

写真はイメージです

テレビも政治も白黒をつけたい国民性

 百花繚乱状態となった韓国サバイバル系オーディション番組の中にあって、Mnetで始まった『PRODUCE101』シリーズは「国民プロデューサー」と呼ばれる視聴者を審査員にする点が画期的であった。だが本当に視聴者がすべてを決めていたかといえば、決してそんなことはない。番組には制作サイドの意向が色濃く反映されていたのだ。  たとえばキャラクターが強烈な参加者が現れたとする。単に歌が上手なだけの人物より、キャラが強くてトークが面白いほうを制作サイドは使いたがる。だからオンエアではキャラが強いほうをたっぷり流す。そうすると人気投票の結果は、おのずと制作スタッフの思惑通りになることが多くなっていく。コンテンツ供給会社/芸能プロダクション・JAKE社長のピョ・ジェシク氏が舞台裏を明かす。 「最初はその“演出”もあまり過激にはやらなかったそうです。だけど番組が高視聴率をマークしたことで、演出はどんどん激しくなっていった。『番組が成功したので狂った』と言うこともできると思います。  上層部からのプレッシャーもあっただろうし、芸能事務所からの接待もあったと言われているし、なによりも視聴率を上げなくちゃいけないという義務感が番組スタッフの間で出始めた。そして投票操作という“禁断の果実”に手を伸ばすわけです。  たしかにやらせはよくない。そんなの、ないほうがいいに決まっていますよ。それにしたって日本人の多くがギョッとするのは、『裁判までする必要あるの?』という点だと思うんです。  まだ判決は出ていないものの、おそらくメインのプロデューサーは1年半くらい実刑を喰らうでしょう。逮捕、裁判、実刑……いくらやらせが悪いことだとしても、『そこまでの話?」という感覚になるのも当然です。『なんで国会に呼ばれて吊るしあげられているの?』って。実際、僕自身もそう思っています。降格とか、会社をクビになるとか、罰金とか……まぁせいぜいそれくらいの処分が妥当じゃないかと感じるんですよね」(ピョ・ジェシク氏)  もっとも「断固、許すまじ!」と息巻く側にも言い分はある。まずこれは国民プロデューサー……つまり視聴者が決める番組と謳われていた。そこで不正を行ったことが非常に大きかった。  たとえ八百長が発覚したとしても、審査員が視聴者じゃなかったらここまで追及されることはなかったはずである。「またテレビ特有の過剰演出かよ」ということで呆れられることはあるだろうが、そこでなんとなく収束していただろう。 「それに加えて、投票する際にお金がかかっていたことも拍車をかけた。100ウォン(約10円)くらいの少額に過ぎないんですけど、お金がかかっているのに欺いたとなれば明確な不正でしょう。つまり犯罪行為です。  番組スタッフは詐欺師として刑事で裁きを受けるべきだし、文句があるなら司法の場で反論すればいい。もはやこれはバラエティとかテレビの問題ではなくなっているんですよ。政治家が票を不法操作するのと同じで、きちんと裁判で白黒つけなくてはいけない問題。そういう考えが韓国では多いのは事実です」(同)
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リアルと演出の狭間で…
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出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。

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