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第568回 8月8日「24時間都市へ」

・新型コロナ対策として郵便局や携帯キャリアショップなど、窓口営業時間を短縮していたところがあったけど、短時間に客が集中し、むしろ逆効果だと言われた。そもそも開けなければ人は集まらないからと不要不急の店舗に自粛が要請されていた時には、通常営業を強行した飲み屋やパチンコ屋が激密空間となってしまっていた。 ・逆に全ての窓口や店舗が24時間営業になっていたらむしろ三密は回避されたはずだ。もちろんそれは無理だが、数年かけて都市の24時間稼働を目指すというのは非現実的な話ではない。24時間営業のコンビニはあっという間に小売業を制覇したのである。そういうことはこのコロナショックで始まった改革を先に進めることで実現すると考える。 ・公共性の高い窓口業務や交通機関の運行から、24時間化をスタートしてほしい。リモートワークに完全移行できない職種でも、出社時間を、真夜中も含めて自由にしてしまうことは可能だろう。コアタイムを昼・夕・夜中と3時間帯設けると、人口密度ないし必要なスペースは1/3になる。そういう動きが多少でも進めば、例えば満員電車は解消されるだろう。 ・人それぞれが自分のリズムで仕事ができることは健全だと思う。人間の生活時間には個人差がある。夜中の方がはかどるという人は結構多いのだ。そういう人が社会に適合できずひきこもりになったり小説家になったりしている例をたくさん見ている。 ・真夜中にこうこうと灯りがついている状況をもったいないと思うのは勘違いだ。発電は24時間継続して行われていて、現在、消費量が少ない時間帯の電力は、大量に捨てているのである。夜間の経済活動が活溌になれば、あるいは工場の稼働なども日夜同じペースになれば、むしろ大きな省エネルギー効果となる。 ・職場だけでなく学校も同じだ。不登校の子供の中に、生活リズム障害と診断されている例が非常に多い。遠隔授業の効果的効率的なシステムが構築できたら、毎日の登校の必要性はなくなるだろうが、できればたまにでも登校させることは望ましいだろう。学校や図書館は24時間開いていて、好きな時間帯に活用できるとしたら、それがベストなのではないか。 ・そういうことが実現した都市では、子供が夜中の公園で遊んでいるような光景も普通のものになるだろう。その時、治安の問題はどうかというと、むしろ好転すると考える。日常生活が途切れていないとしたら、つまり危険な「夜」という概念自体がなくなる。 ・その労働力はどうするんだと言う人がいるだろうが、むしろ労働機会は急いで増やさなくてはならない現状がある。以前書いたが、仕事が減っていくことが問題なのだ。例えば店舗の販売員など接客業の多くがオートマチック化される。人員が不要になる。そしてテレワークが本格稼働すると不要になる人材が顕在化する。ある程度はそこで削減されるが、どうしても人間が必要な部分は残る。それを24時間営業化によりワークシェアすることで、失業問題を回避できる。収益は減らず、作業やサービスの質は下がらず、失業者は増えない。 ・ところで話変わるけど、テレビ番組が今の延長で進化していってタレントの遠隔出演が普通になったら、夜の生番組に出たい(けど労基法で出られない)子役や未成年アイドルは時差のある外国に移住すればいいよね。 ……………………………………………………………………………………………… ※この話題「24時間都市へ」のライブトークVer.はこちらです↓
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。
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