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第569回 8月29日「鎖国のすすめ」

・人類は過去100年にわたって交通、物流、そして情報通信のパワーを無制限に拡大し続けてきた。しかし地球の表面がかき混ぜられ均一になっている状況は、とても危険なことだった。例えば致死的なウィルスが瞬時にして全世界に広がる。対応の余裕もなく、全人類が滅亡してしまう。そんな可能性を、今さらのように僕らは知ったわけだ。 ・文化的にも均一化は良くない。異文化と出会った時のスパークは、普段は余計な情報を遮断しローカルの文化を追求しているからこそ得られるものだ。 ・コロナ禍をきっかけにこれから反グローバル化に進む国は多いと思う。もちろん政治的経済的な事情ありきだろうが、例えばアメリカは中国と断絶する、だけでなく、このまま国を閉じていく戦略に進んでいく可能性がある。もともと食糧生産力もあるし、昨今はシェールガスのおかげでエネルギーの心配もなくなっているのだ。そしてその方向にゆくとしたら、その過程のどこかで日本は放り出されるだろう。 ・今ここで、日本が鎖国したらどうなるか、という思考実験はいかがか。四方を海に囲まれている。今のところは十二分な人口を搭載している。自然と四季に恵まれている。そんな条件がまずベースになる。 ・食料について。これを心配する向きが多いのは過去の世界大戦時のトラウマがあるせいだ。戦争のような特殊状況や流通の混乱がない限り、それほど心配することはない。一時的に不足するものは多いだろうが、国内生産国内消費を前提にした効率的計画的な生産に切り替え自給率100%にするのに10年はかからない。捕鯨の本格的再開を考えてもいいだろう。長期的には、食用昆虫の養殖とそれを使用した人工肉の研究を進めておくことだ。 ・エネルギー。石油の輸入が完全に止まる状況を前提にしても、方策はある。石炭は国内にとてつもない埋蔵量がある。これに頼るとしても向こう1000年は大丈夫だそうだ。エネルギー源としてだけでなく加工素材として、最新技術を適用して活用方法を考える。 ・環境負荷を考えたらエネルギーとしてより有望なのは地熱発電かもしれない。もともと世界に知られる温泉の国なのである。有望な天然ガス田も多数発見されている。これまで本気でそれらの開発をしなかったのは、石油を売りつけられ、石油に頼ってきたからなのだ。 ・文化。全世界との国交をすべて断絶するのではなく、通信ネットワークを通じて最低限の情報交換と、そしてコンテンツ配信は続ける。そして江戸時代の出島のように一箇所だけ外国から訪問客を受け入れる場所を設ける。きっとそこはオタク文化のテーマパークになることだろう。……という小説は書いたことがあったので読んでみてほしい。これはあくまでもフィクションだけど(クリック→『聖地』)。 ・……と、いろいろなことを割と真面目に考えていく。さらに、新型コロナのような厄災のリスクを勘案すると、メリットがデメリットを超えてしまう。鎖国は極めて有効な戦略だという結論が出てしまうのだ。 ・ただし、このシミュレーションの結果から鎖国を提案することは、どうしてもできない。あらゆる要件を熟考した上で、日本が鎖国をするために絶対に不可欠な条件が一つ、明らかになってしまうからだ。それは「核兵器を持つ」ことである。 ……………………………………………………………………………………………… ※この話題「鎖国のすすめ」のライブトークVer.はこちらです↓
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。
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