雑学

イスラム教に改宗する日本人【ジャーナリスト常岡浩介の場合】

常岡浩介

常岡浩介・ジャーナリスト。イスラム名はシャミル。アフガニスタン、エチオピア、イラクなど、世界の紛争地帯を精力的に取材。著書に『ロシア 語られない戦争』(アスキー新書)など

 世界では4人に1人がイスラム教徒だ。日本ではイスラム原理主義と相まって、縁遠い宗教と思われているが、実は近年、イスラム教に改宗する日本人が増えているという。イングーシ共和国、アフガニスタン、そして昨年はパキスタンで取材活動中に身柄を押さえられ、“拘束ジャーナリスト”の異名を持つ常岡浩介氏もその1人だ。

「キリスト教や仏教は、持ってるモノをすべて捨てて貧しい者に施せ……など、信徒の権利に肯定的でない。僕からすれば、人間の尊厳の否定だし、納得いかなかった。一方、イスラム教は人間の権利に肯定的で、みな平等だという。決定的な違いですね」

 常岡氏は改宗の率直なきっかけをこうも付け加えた。

「とにかくイスラム教は敷居が低い。聖俗一致で聖職者と一般の信徒の区別がなく、聖職者も存在しない。しかも、いくら悪いことしても、アッラーは決して見放さないから、破門もない。これは楽でいいぞ!と(笑)。まぁ、そのせいでムスリムには、僕を含め、ダメなヤツも多いんですが(苦笑)」

 そもそも常岡氏がイスラム教に興味を抱いたのは、学生時代の1992年にまで遡る。

「アフリカを陸路で横断できるか試そうと、アルジェリアに行ったんです。ただ、当時は内戦の危機が高まり、直前にやっとビザが下りた。で、行ってみたらバリバリに内戦中(笑)。当時、朝日新聞は『イスラム原理主義が台頭し、市民は恐れおののいてる』と報じてましたが、当局はイスラム政党を支持する一般人を激しく弾圧していた。街中には落書きが溢れていて、そのすべてがイスラム政党を支持。つまり、日本の報道とまったく違っていた。それで興味を持って、クルアーン(コーラン)を読み始めたんです。邦訳の語尾が『〇〇じゃぞ』だったのには、違和感を禁じ得ませんでしたが(笑)」

 取材で世界の紛争地帯を転々とする常岡氏にはなかなか改宗の機会が訪れなかったが、2000年にモスクワで晴れてムスリムとなる。当然、酒と豚肉はご法度になった。

「酒はやめたが、食パンに含まれるコーンスターチには豚のエキス、菓子パンにもラードが含まれたりで、日本で豚を口にしないのは不可能に近い。さすがにトンカツは食べませんが、長崎人なのでチャンポンだけは、豚肉を隣りの人にあげて、食べてます(笑)」

 近年、ヨーロッパでもイスラム教に改宗する若者が増えている。

「キリスト教の国ですが、彼らはイスラム教とずっとケンカしてきた歴史があるので、少なくともイスラムに触れているわけです。それに比べ、日本はイスラム未到達の地。コミュニティにムスリムがいる前提がなく無知に過ぎる……。イスラム国家には親日国も多いし、資源国でもある。仲よくすればメリットも多いのに、残念ですよね」<取材・文/齊藤武宏>

※3/13発売の週刊SPA!「イスラム教に改宗する日本人のなぜ」より

週刊SPA!3/20号(3/13発売)

表紙の人/川口春奈

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