更新日:2020年10月09日 16:12
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東京地方裁判所でコロナ発覚。1日も休めない裁判所と報道機関の苦悩

10月は注目裁判が多数。報道機関も速報で報じなくてはならない

濃厚接触に当たらないだろうと述べた保健所の見解について、裁判所は”現時点では安全性の確認が取れたとは言えない”と判断した。その理由について、高裁は万が一、何か問題が起きた時に責任が持てないからである。濃厚接触の疑いがある記者については、庁内の取材を自粛するよう、あす以降で要請するかもしれない」 「裁判所がここまで意思を見せてコメントを発表するのは異例のことです。そこまで、本気で取り掛からないといけない案件と判断したんでしょうね。長く裁判担当をしていますが、初めての経験です」(前出の裁判担当記者)  さらに各社の裁判担当の記者を悩ませたのは、翌日8日の裁判スケジュールだった。去年、池袋で母子を車ではねて死亡させた、旧通産省・工業技術院の元院長飯塚幸三被告の初公判がおこなわれるからである。このほかにも翌週には河井案里元参議院議員の裁判や、座間で9人を殺害した白石隆浩被告の裁判もあり、裁判担当記者にとっては1日も休める状況ではなかったのだ。そのため、社によっては、「感染した記者とは離れた席に座っていた」「マスクをしていて、当該記者と話もしていないのでうちは関係ない」と、自宅待機をしないという判断をするところも相次いだ。 「裁判所としても、濃厚接触者の結果がはっきりしていなかったので、完全に庁内の出入りをお断りとも言えない状況だった。各社の判断には委ねるけど、わかってよねという感じ。でも、マスコミ各社も取材はしなければいけなかったから。でも、それで出社する社としない社が出るのも不公平な気がするが……」(裁判所関係者)

問題は窓がない裁判所の換気機能

 結果、各社のもやもやがすっきりしたのは、翌日の飯塚幸三被告の初公判が終わった、夕方だった。  目の下にクマを作った時事通信社の前キャップが各社のブースに声をかけて、3度目のクラブ総会を開催することになった。 「保健所から、裁判の廷内の関係者、および記者クラブのブース内に濃厚接触者はいないと連絡がありました。ただ……弊社のクラブ員で、他の記者が体調不良を訴えております」  裁判所の記者クラブの消毒を担当した保健所の職員も、このままで感染拡大は終わるのだろうかと、不安の色を隠せない様子だったという。 「私の管轄と違うところが消毒の担当になって裁判所内に行ったそうですが、窓があまりないことに驚いたようです。換気ができているとは言いにくい環境だったと話していました」(保健所関係者)  一難去ってまた一難。新型コロナウイルスは、たった1人の感染から、周りの環境を一変させることになるのを改めて思い知った形となった。裁判所の記者クラブという外界から閉ざされた空間で、どこまで感染が広がっているのか。それがわかるのは数週間後になるのだろうか。 〈文・取材/日刊SPA!取材班〉
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