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男性から女性に性を変え、面接に臨んだ2人が語るLGBT就活の“いま”

自分の過去を受け入れないといけないときが必ず来る

LGBT就活

「男でも女でもなく、いつかは“自分”にならないといけない」

西原:最近、メイクも柔らかくなったり、伸ばしていた髪をばっさり切ったり、楓さんはどんどん変わっていく。 サリー:メイクをめんどうだと思い始めたのが臨界点というか。新しい生活にワクワクしていたのに、本当の乙女はメイクをめんどうだと思っているのかと気づけた(笑)。別にスカートはかなくてもズボンでいいや、髪も短くしていいやって。 西原:女性になりたいとこだわっても、子どもが産めるようにはならないし、自分の過去を受け入れないといけないときが必ず来る。男でも女でもなく、いつかは“自分”にならないといけない。

女子になるタイミングは“就活”と“40代後半”

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「メイクしないと女性でないという焦りはなくなった」

――LGBTの採用に積極的なフレンドリー企業が増えつつある一方、LGBT就活サポートを手がける「JobRainbow」の調べでは、求職活動において性の在り方に困難を感じるLGBは44%、トランスジェンダー(T)は履歴書の性別と外見が異なる場合もあり70%にも及んでいます。 サリー:LGBT採用に前向きな企業はITやコンサルタント業界が多い。一方でお客さんと接する機会が多い金融や教育関係などは少ない印象です。「自分は理解するけど、お客さまが何と言うかわからない」という言葉もよく耳にします。そんななか「日の丸タクシー」さんがLGBT就職説明会に参加していたのは驚きました。 西原:24時間女性として生活できるかどうかは、仕事と家庭にかかっています。だから乙女塾の生徒で多いのは楓さんのように就活のタイミングの学生と、40代後半でセカンドライフが視野に入ってきた、お家ではお父さんをやられている方たち。仕事も子育ても一段落し、「自分たちの世代は許される時代じゃなかった」と隠してきたけど、人生の最期は女性として迎えたいようです。  仕事は経営者や脳外科医から教員、日雇いの人まで幅広い。どこにでもいるんだなって思いました。お父さんたちはすごく恐縮していて、何からやればいいのかわからず戸惑っているので、まずは心に秘めてきた思いをしっかり聞くことから始めています。 サリー:すごく考えさせられますね。LGBTというのは、自分が自分らしくいられるための、コンディションを整えることでもあります。だから就活生には、ありのままでいるためにも、ここで負けずにがんばってもらいたいし、不安なときは相談してきてほしい。 西原:こんな自分を採用してくれる企業があるのかな?と就活生は不安になりがちですよね。でも、コクヨさんが性別欄のない履歴書を販売するように、よく考えたら仕事ができるかどうかに性別は関係ない。そのうち履歴書から性別欄がなくなるかもしれません。 サリー:ダイバーシティを掲げていない会社でも、働いてみると自由だったということはよくあります。でも、どんな会社かわからないと就活生の心理的負担は大きく、フレンドリーと表明している企業を学生は選ぶ。あと、LGBT就職説明会には、当事者以外の方も多く訪れているんですよ。企業のLGBTに対する取り組みを試金石に、その企業の柔軟性や将来性を見ている。実際にコロナ禍でのテレワークを率先するなど、新しい課題に迅速に対応できる会社がフレンドリー企業には多かったです。 LGBT就活【西原さつきさん】 「乙女塾 Project」主宰。NHKドラマ『女子的生活』に出演しながら、主演俳優の演技指導も担当する。現在公開中の『ミッドナイトスワン』(草彅剛主演、内田英治監督)では、脚本を監修。 【サリー楓さん】 建築家。映画『息子のままで、女子になる(英題:You Decide.)』(杉岡太樹監督)はロサンゼルスの映画祭を皮切りに公式招待が多数寄せられている。日本では’21年初夏に渋谷・ユーロスペースで公開予定。 <取材・文/大西夏奈子 村田孔明 撮影/Kazuma Yamano 写真提供/JobRainbow
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