更新日:2020年12月10日 09:55
エンタメ

渡部建の“ガキの使い”謝罪会見 番組側の対応にも問題あるのでは?

迷惑を被ったのはむしろ渡部の方!?

 11月末に、日本テレビ系大みそか特番「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」「絶対に笑ってはいけない大貧民 GoToラスベガス24時!」で地上波に復帰すると報じられたことへの質問に対して、渡部建は「申し訳ないが、収録に関しては何も言えない」と、回答を拒否することに終始した。
 この時点で、松本人志が「ワイドナショー」(フジテレビ系)で渡部建が同番組の収録に参加したことを認めている。そもそも収録参加が報じられたことが原因で、バッシングが激しくなったために記者会見が開かれることになったのだ。にもかかわらず、それすら認めない渡部の態度に取材陣は苛立ちと「こっちもガキの使いで来てるわけではない」という声が飛んだ。それでも渡部建はただ「申し訳ない」と繰り返すばかりで、番組出演ついての回答を拒否し続けた。番組側から箝口令(かんこうれい)が敷かれていたのだろうか?  件の新聞記者が言っていた「言えないことがあったりすると、致命的な問題になる」という言葉が思い出される。こんな露骨な回答拒否が過去にあっだろうか。だが渡部建の意志だけで収録に参加したことを伏せているとは考えにくい。これでは、まるでトカゲの尻尾切りだ。もう既に世間が周知の情報まで認めることを許さない処置はグロテスクに感じる。  渡部建の方から出演を打診したとは考えにくい。出演の情報が漏洩して、迷惑を被ったのは渡部の方ではないか。仮に出演の情報が渡部建側から漏れたとしても、漏洩防止を徹底できなかったのは、やはり番組の責任ではないか。甘い見立てしかできない非常識ぶりは、双方とも同等だ。そもそも情報が漏れたことで番組側は助かったはずだ。このまま放送していたら、もっとひどい事態になった可能性が高い。

全て裏目に……もはや「パニック」状態

 渡部建は、義務を先延ばしにした末に、安易な解決を試みた結果、さらに事態は悪化してしまい、甘言を弄して手を差し伸べてきた者に裏切られ、孤立無縁になってしまった。それは、どこか寓話のように思えた。すると開高健の小説「パニック」が思い浮かんだ。ストーリーはあらかた忘れているので、ウィキペディアであらすじを確かめた。 「パニック」は組織の中の人間を考察した小説だ。地方のある山で120年ぶりに一斉に笹が花を開き、実を結んだ。この実を巡って、あらゆる種類の野ネズミが集まり、大量繁殖する。県庁の山林課には多数の鼠害の苦情が押し寄せられる。山林課に勤める主人公は、鼠の天敵であるイタチやヘビを買い、野に放つ。しかし、対策は丸で効果が無かった。次第に人々は鼠を媒介とした伝染病の幻に怯え始め、街の医師は誇大妄想に陥った患者の対応に追われた。野党は、知事の腐敗・怠慢を非難する。その状況で、主人公は上司からラジオと新聞で鼠害が終了したという嘘の宣言をするよう頼まれる。そして主人公は左遷を告げられる。その夜、鼠の大群が集団ヒステリーで湖の中に次々と飛び込み死に絶え、騒動は終結する。その有り様を目撃した主人公は、ある侘びしさの混じった満足感から、「やっぱり人間の群に戻るより仕方ないじゃないか」と思う。(Wikipedia Commons (CC BY-SA 3.0))  やはり今回の騒動とダブる。サディスティックな性戯でしか解消できないほどのストレスを知りながら、またその「人間の群れ」に戻ることを渡部建は望んだ。しかしそのために画策した事は全て裏目に出て、世間の怒りを買った。最終的に、渡部建は組織を生かすために自らを犠牲にするしかない状況に追い込まれてしまった。こちらのエンディングには救いがない。笑ってはいけないのか、笑えないのか、もはや笑うしかないのか、よくわからない。
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina
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