北海道「核のごみ」処分場の候補地ってどんな所? 町の住民に本音を聞いた
かねてより問題になっていた高レベル放射性廃棄物の処分場問題。原発稼働に伴い、排出されてしまう「核のごみ」をどうするかは避けて通れない問題だが、その処分場の候補地として名乗りを上げたのは北海道の寿都町(すっつ)と神恵内村(かもえない)。
名前を聞いてもピンと来ないと思うが、どちらの自治体も小樽やニセコなどがある後志(しりべし)という地域。筆者は高校時代、この後志に住んでいたのだが、両町村とも車で通った程度しかない。そこで里帰りのついでに足を延ばし、寿都と神恵内を訪問。どんな場所なのか探ってみることにした。
まず最初に訪れたのは寿都町。日本海に面した寿都湾に沿ってU字型をした町で、面積は東京都練馬区のおよそ倍の95.36ヘクタール。その8割近くを山林が占める海と山の恵みが豊かな土地だ。
札幌からは車で約3時間半。空は鉛色で時折雪が激しく降り、荒波が岩場を打ちつける様子はまさに真冬のザ・日本海。いかにも演歌が似合いそうな光景だ。
港の近くには道の駅をはじめ、飲食店や海産物を扱う店が揃っているが、シーズンオフで平日のせいか半分以上の店は閉まったまま。観光客らしき人の姿はまったく見かけない。
氷点下の中、かじかむ手に震えながら町の中心部を散策するが、これといった観光名所があるわけでもない。そんな中、町役場の近くに最終処分場の建設に反対する看板を発見。実は、寿都は風速6メートル以上の強風の吹く日が1年の半分以上を占める“風の町”。風力発電用の巨大な風車群が町のシンボルになっているのだ。
その後、冷えた身体を温めようと訪れたのは町はずれにある『寿都温泉ゆべつの湯』。露天風呂付きの広い大浴場で、内湯からも一面ガラス張りで雪見風呂を堪能することができた。
寿都の人気スポットなのか館内はひっとりした町の中心部とは違って年配客で大賑い。週に一度は入りに来るという60代の地元男性と処分場の話になったが、「風力発電の町には似合わない」と本音を吐露。漁業関係者らしく海への影響を心配していた。
そして、次の日もう1つの処分場候補地の神恵内村へ。人口わずか815人(※11月末時点)と北海道では道北の音威子府村(おといねっぷ)に次いで住民の少ない自治体だ。
ただし、寿都からは60km以上も離れており、それでも同じ後志地方とはさすが北海道。スケール感が道外とは違う。
ちなみに隣の泊村には泊原子力発電所があり、関連施設など建物の数も多い。面積は神恵内村の3分の2程度なのに人口は倍近い。
村には郷土資料館のほか、「童心館」という郷土玩具を展示する施設が観光名所としてあったが、どちらも冬季は閉鎖。それならばと海水以上の塩分濃度の高い泉質が特徴という「リフレッシュプラザ998」という温泉に行きたかったが、こちらも2020年4月でまさかの営業終了……。
村の中心地の神恵内漁港のある集落も見所は少なく、村役場の隣に小さな神社がある程度。この日も断続的に雪が激しく降り、海から吹き付ける強い風もためか体感温度はマイナス10度。どこかでひと息つこうにも数少ない飲食店は営業しておらず、コンビニやスーパーは村に1軒もなかった。
寿都は風力発電の町
コンビニが1軒もない神恵内村
1
2
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。
記事一覧へ
記事一覧へ
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ