大森靖子が語る2020年と炎上問題「なんでも他人の問題を自分の問題にしがち」
どんな人でも認められる場所、認められない場所がある
“2倍速文化”に存在を否定される
――大森さんの楽曲が使われている動画も多いですが。
大森:モノづくりをしていると、“2倍速文化”は存在を否定された気分になるんですよね。私の曲でバズった動画もあるみたいなんですが、歌詞も聞き取れないし、「キラキラ欲を満たすためのフィルターでしかないのかな」って悲しい気持ちになる。
人間の泥くさい部分をかわいいものとして演出しているのに、そこを飛ばしているんですよね。とは言いつつも、TikTokをやっている大人たちは好きですけどね。娘とかに強引に撮られて恥ずかしがっている姿とか「かわいい!」って思う。
――技術は進化して楽しいことは増えている一方で、どこかで歪みが生まれるという。
大森:そういえばこの前、天橋立に行ったんですよ。天橋立には有名な和歌があって(「大江山いく野の道の遠ければまだふみも見ず天橋立」)、これは歌詠みが上手な女性が、周りから「親が書いたんだろ」って批判されたときに詠んだ歌なんです。
いろんな季語や掛詞を用いて反論しているのを知って、なんかラップみたいで面白いなって思うと同時に、歌って進化してないんだなって悲しい気持ちにもなって。
――たしかに『フリースタイルダンジョン』のようですね。
大森:言葉も人と一緒で、並べると新しい意味が出てくるのに、「言葉狩り」をされていくことによって、一面的な表現しかできなくなるんじゃないかっていう危機感はあります。昔の人が和歌を詠むときみたいに、言葉を紡ぐワクワク感はずっと持ち続けていたいな。
――来年もエンタメでは厳しいムードが続きそうですが、抱負があれば教えてください。
大森:音楽活動においては、長期的目標を決め込んでも楽しくないっていうポリシーがあるので、ライブやツアー、それぐらいで一年を計画するぐらい。ほかで言えば、SNSとか雑誌の表紙は“言葉狩りの戦場”になっちゃうので、そういったところから逃れて、深くえぐった表現をしていこうと思っています。
【Seiko Omori】
’87年、愛媛県生まれ。“超歌手”。プロデューサー兼メンバーとしてアイドルグループ「ZOC」を率いる。’14年にシングル「きゅるきゅる」でメジャーデビュー。5枚目のフルアルバム『Kintsugi』を12月9日にリリースした
取材・文/東田俊介 撮影/尾藤能暢 衣装/rurumu:
※12/15発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』より
大学を卒業後、土方、地図会社、大手ベンチャー、外資など振り幅広く経験。超得意分野はエンタメ
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