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「1万円札が返ってこない!」客の“釣り銭返せ”詐欺、飲食店長はどう対応するの?

奪われる店長の休日

ストレス Aさん曰く、券売機は嘘をつかないという。すべての取引が履歴として残り、それに誤差は発生しない。 「向こうはできるだけ早く店を出たいから、先ほども説明した通りスタッフを焦らせるのです。“もうすぐ乗る予定の新幹線が出る”とか“会社に戻らないといけない”とか。しかも、そんな要求を外国人スタッフに言います。彼らはまだ完全な日本語を習得していないから、こちらの言いなりにさせやすい……という判断なのでしょう。本人は万引き感覚のつもりでやっているのだと思いますが、実際は万引きより悪質で下劣です」  その上、「返金されない詐欺」はAさんの休日をも奪っている。 「この対応のために、私は時間外にもかかわらず店に行って履歴の確認作業をやったことがあります。監視カメラの映像もチェックします。その後、客には丁寧に説明して結局1時間以上縛られました。もちろん、残業代は発生しません」

「神様」の犯罪

 中には券売機の仕組みをよく知っている者も出現する。即ち、「券売機での取引には履歴が残る」という点をしっかり考慮している者だ。 「ある時、券売機のコンセントを抜かれたことがあります。その上で“釣りが返ってこない。どうにかしろ。いくらよこせ”と言われたわけです。“履歴を確認します”と言っても、“電源がついてないから履歴なんか確認できないじゃないか”と返される始末。もちろん、向こうは何から何まで考慮してそういうことをやっています。ちなみに、奴さんはお金なんか最初から入れてません」  そういうことがあっても、日本の飲食店のスタッフは客に対して常に頭を下げなければならない……とAさんは付け加えた。実際に、現場のスタッフの判断で客にお金を渡してしまったこともあるそうだ。 「こういうトラブルは、本来であれば後日対応なんですが……。店は忙しい、人手に余裕はない、とにかく返金を急かされるで、結局言われるがままにならざるを得ないこともあります」  日本では、客と店員は対等の立場ではない。歌手の故三波春夫は、「お客様は神様です」という自分の言葉が世間で曲解されていることに苦悩し続けた。他国であれば「返金はしない。帰れ!」で済む話が、日本ではスタッフの負担になってしまう。  客を唯一絶対神のように扱う「おもてなし」は、現場の店舗スタッフから「犯罪に立ち向かう手段」を奪っていると言わざるを得ない。<取材・文/澤田真一>ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー
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