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千原ジュニアの”笑いの大辞典”制作秘話を大公開

―[大J林]―
 『週刊SPA!』誌上で3年3か月にわたって連載された『大J林』が、12月18日についに書籍として発売開始! 今回はそれを記念して、〝笑いの大辞典〟を編纂した千原ジュニアのインタビューを3回にわけてお届けする。632ページ、220もの新語・造語が詰まったこの『大J林』は、いったいどのようにして生まれたのか?

多種多様な語句が揃う圧倒的バリエーション!”がさつ”な人へのプレゼントにも?

――ついに大J林が単行本として発売されました。率直な感想は? ジュニア けっこうボリューミーな本ですし、今年の正月はコロナの影響でそんなに遠出もできません。ですから正月休みの暇つぶしの足しにでもなれば、と思いますね。そういった意味では、いいタイミングで出せたんではないかと。 ――そしてその中身は、ジュニアさんが作りに作った新語・造語が220も詰まっています。 ジュニア それだけあれば、誰かのどこかには刺さるでしょう。例えば、この本には〝がさつ〟にまつわるエピソードが何個かありますから、「ウチの彼氏、ちょっとがさつだなあ」と感じている女性がいれば、彼氏にこの本を贈って気づいてもらったり。だから自分用はもちろんのこと、プレゼントにも意外と向いてると思いますね。 ――SPA!での連載時ではエピソードを2本披露していただき、その内容に即した新語・造語を2つ作るということをやっていただいてました。これを毎週やっていたのですから、正直けっこうしんどかったですか? ジュニア でも僕が喋って文章としてまとめてもらうことによって、脳内にきれいに整理されるんですよ。だからここで喋って、それ以降、別の現場で喋るときの基礎となるというか。どう着地するかわからないままに喋り出しても文字にすることにより、最後に「ああ、思いもよらないところで、こんなにきれいに着地できんねや」みたいなこともありましたし。

芸人・千原ジュニアを生んだ【ネコポニー】

――では220もの新語・造語のなかでも、特に印象に残っているものを挙げていただきたいのですが。 ジュニア 【残酷ザッピング】なんていうのはもちろんやられてるだろうし、逆に気付かないうちに自分でもやっていると思うんですよ。 ――【残酷ザッピング】は当時2歳4か月だったジュニアさんの息子が、テレビに映っている飯尾さんがまさにこれからボケる! という瞬間にテレビのチャンネルを変えた、というエピソードから生まれた造語ですね。意味は「子どもはときとして、とてもひどいことをする」というものでした。 ジュニア 例えばニュースを観ていて、国内ニュースが終わり海外のニュースになったのでザッピングしたという視聴者がいたとします。しかしニュースキャスターからしたら、次の海外ニュースでは国と首相の名前がむちゃくちゃ言いにくい。それを噛まずに言えるのかがキャスターにとってはクライマックスなわけで、その瞬間にチャンネルを変えることはキャスターにとっては残酷ザッピングなんですよ。  僕はフィギュアスケートにまったく興味がないから「今まさにトリプルアクセル!」というときにチャンネルを変えてたでしょうし、プロ野球でも「9回裏2アウト満塁、スリーボール・ツーストライク。ピッチャー、最後の球を投げた!」という瞬間に変えてたと思うんですよ。 ――そう考えると、この世は残酷ザッピングで溢れてますね。 ジュニア いや、ホンマに。あとは【ネコポニー】とか。これは「トラウマ」ほど衝撃的でもセンセーショナルなことでもない、それこそ【ネコポニー】ぐらいの経験によって人は形成されているんじゃないかと。そんな造語を作ったこともありました。 ――これはみんなも経験しているでしょうし、凄く汎用性がありますよね。 ジュニア あとネガティブなものではなく、いい結果をもたらすネコポニーもあると思うんです。  例えば吉本に入って最初に背中を見させてもらったのが板尾さん。これはいまだに忘れもしない、一緒に御堂筋を歩いているときに「フレッシュチーズ」と書かれたトラックが信号待ちしてて。それを見た板尾さんが、誰に言うでもなく「チーズはそもそも腐っとんのにフレッシュってどういうことやねん。腐りたてってことか」とつぶやいたんです。  それを聞いた僕は「やっぱ、そうっすよねえ。それでいいんですよねえ」と大きく頷いたのを覚えてますね。だからその板尾さんのつぶやきは、僕のネコポニーなんですよ。それがあるから、今の芸人・千原ジュニアがあるというか。 <取材・文/村橋ゴロー>
―[大J林]―
<著者プロフィール>

’74年3月30日、京都府生まれ。15歳で実兄せいじと千原兄弟を結成。現在は『にけつッ‼』(読売テレビ)、『世界くらべてみたら』(TBS)、『千原ジュニアの座王』(関西テレビ)、『千原ジュニアのヘベレケ』(東海テレビ)、『千原ジュニアと九州で人気番組を創る番組』(九州朝日放送)、『ABEMAニュースショー』(ABEMA TV)など数多くの番組にレギュラー出演中。 YouTubeチャンネル『千原ジュニアYouTube』、『ジュニア小籔フットのYouTube』も配信中。『週刊SPA!』誌上では直筆4コマ漫画「囚囚囚囚」を連載中

大J林

『残念な〇〇』、『捨て左折』など数々の造語を生み出してきた奇才・千原ジュニアが放つ辞書風エッセイ