更新日:2021年02月06日 16:12
エンタメ

「稲川怪談」30年の軌跡。ファン同士が結婚、怪談は暴走族にも愛されている

無料招待を断り、10年以上公演に通い続ける障がい者の母子

稲川淳二 私の生きがいの1つは、ファンの方との交流です。今でもなるべくファンレターには返信していますし、30年近く経った今、20年以上つながっているファンの方も少なくありません。そのなかに長らく公演に通っていただいている親子がいらっしゃってね、息子さんは精神障がい者なんです。  彼が雇用施設で働いて稼いだお金で、二人とも来ていただいていた。当時の日給は150円。私の公演は1人5000円近くしますからね。負担は小さくないでしょう。  だから、あるとき「公演に招待する」と話をお母さんに持ちかけたんです。でも、断られてしまいました。  彼は怪談ツアーが楽しみで、そのために一生懸命働いている。だから、このままで良いんだと言われたんですよ。私は嬉しくて泣いてしまってねぇ。私の怪談ツアーには彼のような障がい者の方が多くいらっしゃって、色んな声をかけていただける。  それに彼らが公演中に声などを発しても、温かく受け入れてくれるファンもいる。私は怪談ツアーで人助けをしているつもりはないんですが、それでも「ありがとう」の言葉をいただける。私もそれは同じでね、ファンの方の声に「心」をいただいて、人生をもらっているんですよ。

ファン同士の結婚も。親から子へ語り継がれる「稲川怪談」

稲川淳二 ツアーを30年近くもやっていると、ファンの方の人生が垣間見えるんです。私の公演がきっかけで結婚したファンも知っているだけで5組ありまして、結婚式にビデオレターを送ったこともあります。微力だけど、誰かの人生の大きな転機に関われるのは嬉しいですよ。  ある公演でお客さんだった母娘に出会ったとき、娘さんはまだ小さな子どもでした。それから何年も二人は怪談ツアーに来てくださってね、少しずつ交流を深めて、娘さんに下駄を送ってあげたこともありました。すると娘さんのお祖母さんから感謝の手紙を送っていただきました。  最近は毎回、毎年、会えるわけではありませんが、今では娘さんは立派な学生さんに育っていますよ。それに彼氏も見せてもらえるなんて、ツアーを始めたばかりの頃は考えもしなかった。長く続けたからこそ、見えるものはたくさんあるんですよね。  メディアではよく「稲川怪談」と言っていただいているんですが、ファンレターでは親から子どもへ読み聞かせているという声も結構いただきます。  あるとき、お子さんからの手紙にその話の内容を詳細に書いてあったのですが、まさに「完コピ」でした。その記憶力にも驚きましたし、よほど親御さんの印象に残った怪談だったのでしょう。こうして、私がつくった怪談が手を離れても語られるのは作り手としては嬉しい限り。だからもっとみなさんに喜んでもらいたくて、怪談を続けられるんです。 <取材・文/藤冨啓之、撮影/長谷英史>
WEBコンテンツ制作会社「もっとグッド」代表取締役。ライター集団「ライティングパートナーズ」の主宰も務める。オウンドメディアのコンサルティングのほか、ビジネス・社会分野のライターとしても活動
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●稲川淳二オフィシャルWebサイト
https://www.j-inagawa.com

●MYSTERY NIGHT TOUR 2021 稲川淳二の怪談ナイト
http://www.inagawa-kaidan.com

●YouTubeチャンネル『稲川淳二メモリアル【遺言】』
https://www.youtube.com/channel/UCwBwI0hGtHAp-ZPT_dR1_DA/videos

●ニコニコチャンネル
稲川淳二のファンと怪異があつまるチャンネル

https://ch.nicovideo.jp/j-inagawa
※2021年1月22日に開局
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