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ワクチン接種、日本で何が起きるのか? 海外医師たちが証言する問題

政府への信頼が厚いスウェーデンの現状

ワクチン

スウェーデンでは1月から通勤時間帯の公共交通機関内のマスク着用が推奨。「それでも、市中での着用率は1割程度です」(宮川氏)

 都市封鎖をせずに集団免疫の獲得を目指すという「緩和政策」で注目を浴びていたスウェーデン。多くの死者を出しながらも第1波を乗り切ったかに見えたが、11月から第2波に見舞われ、再び死者数が増大した。しかし、「すでに山は超えた」と語るのはスウェーデンのカロリンスカ大学病院に勤める宮川絢子医師だ。 「ピークは昨年の12月中旬で、今年に入ってからは減少傾向です。よく『スウェーデンはノーガード』と報じられますがそれは誤りで、集会の人数制限や飲食店の営業時間規制などの感染症対策が取られました。その結果、例年流行するインフルエンザが日本と同様に今年は激減。対策が機能しています」  隣国のノルウェーではワクチン接種後に29人もの高齢者が死亡したことが報道され、世界中に小さくない衝撃を与えている。スウェーデンでも同様の事態が起きているが、国内では冷静に受け止められているという。 「現時点で25万人がワクチン接種を受け、52人が亡くなったと報告されていますが、それを煽るような国内報道はありません。多くが80~90代の高齢者で、パンデミックがなくとも亡くなっていた可能性が国民に共有されているからです。世論調査ではワクチン接種に国民の8割が肯定的と、待ち望まれている状況です」

メディアへの向き合い方が重要

 もし、日本で80歳以上の高齢者といえど、50人以上がワクチン後に死亡すれば大混乱になるだろう。前出の木村氏もメディアへの向き合い方が重要だと強調する。 「英国では通常株と比べ最大7割も感染力が強いイギリス変異株が猛威を振るい、英首相は脅威レベル最大の『レベル5』を宣言して3度目の都市封鎖を実施。変異株の感染例で11件が感染経路不明なので、該当する地域の住民35万人を全員検査していますが、そんななかでもワクチン接種自体は着々と進行している。 『社会防衛としてのワクチン接種』を国民に啓蒙すると同時に、『決してゼロリスクではない』と基礎免疫疾患などについての広報も怠りません。不安をあおらず、リスクとベネフィットを天秤にかけて個人の判断を促しています。  また、需要殺到でワクチン用の小瓶が不足するという予期せぬ事態も起きています。日本でも輸送や保存の問題で同じような事態が予想されますが、始まってからしかわからない問題もある。切り取って煽るだけの報道とは距離を置くことが大切です」  また、欧州で目下問題なのがワクチンの供給だ。アストラゼネカ社のワクチン生産が滞り、英とEUに軋轢が発生。英は供給状況から本来3週後である2回目の接種間隔を12週に延ばし、多くの人への1回目接種を優先した。  しかし、「接種間隔を長くした場合の予防効果についてはエビデンスが乏しく、英国だけの政策です」と前出の宮川医師は説明する。日本でも供給が遅れた場合は、同様の選択が迫られる可能性があるだろう。  日本の課題は、先例から学べるか否か。同じ轍は踏みたくない。
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変異株で激化するワクチン確保競争
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