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ワクチン接種、日本で何が起きるのか? 海外医師たちが証言する問題

変異株で激化するワクチン確保競争

ワクチン ワクチン開発から接種まで世界をリードする一方、変異株の登場という新たな脅威に直面している英国。しかし、ロンドンで免疫学者としてコロナウイルスを研究する医師の小野昌弘氏は、冷静だ。 「昨年の春から、英政府はオックスフォード大とアストラゼネカ社を組ませ、承認のプロセスにも柔軟に対応するなど迅速にワクチンの国内開発、生産、確保を進めてきました。こうした先行投資が功を奏し、1月24日時点で、いわゆる“コロナ弱者”である医療従事者、介護者、高齢者など1500万人のターゲットに対して半数が1回目の接種を終えています。  変異株に関しては、コロナのワクチンは微調整が比較的容易にできるため、あまり心配していません」

見えていない変異株にこそ留意すべきフェーズ

 アストラゼネカ製のワクチンといえば、ドイツやフランスでは65歳未満に使用を限定すべきとする動きもあり、全成人への使用を承認したEUと見解が分かれている。 「ワクチン供給のトラブルが国際的な政争の具になってしまっていることには、懸念があります。  また、前提として英国でこれだけスピーディに変異株が発見されているのは、サンガー研究所という世界屈指のゲノム解析機関があるから。ブラジル型、南アフリカ型も発見されていますが、感染爆発が起きたアメリカやインドをはじめ、そもそもシークエンス検査が足りておらず、問題のある変異株が出現しているかわからない地域もあります。  見えている変異株に対応することと同時に、見えていない変異株にこそ留意すべきフェーズに来ていると思います」  資金と設備、技術者が揃う先進国ですらゲノム解析にまで手が回らない状態では、ワクチン確保に関しても途上国はいわんやをや。 「移民の多い英国でも、ワクチン懐疑論は社会の主流ではありません。些末な議論をせず、世界全体でいかに感染をコントロールするか、大局的に対処する段階です」
木村正人氏

木村正人氏

【国際ジャーナリスト・木村正人氏】 ロンドン在住。元産経新聞ロンドン支局長。国際政治、安全保障、欧州経済に明るく、『EU崩壊』(新潮新書)など著書多数
宮川絢子医師

宮川絢子医師

【カロリンスカ大学病院外科医・宮川絢子医師】 スウェーデン・カロリンスカ大学病院の外科医、医学博士。’89年慶應義塾大学医学部卒業。’07年よりスウェーデン在住。2児の母
小野昌弘氏

小野昌弘氏

【免疫学者・医師・小野昌弘氏】 京都大学大学院医学研究科卒。京大、阪大の助教を経て渡英。現在インペリアル・カレッジ・ロンドン理学部生命科学科准教授 <取材・文/栗林 篤 仲田舞衣 行安一真(本誌) 写真/アフロ>
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