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今どきファックスを多用する会社の本音「実はメールのほうがシステムは弱い」

ファックス業務だけで月80時間

昭和39年創業のモリタ工業。ガス風呂釡の老舗企業として業界では高い認知度を誇る

 モリタ工業では業務効率化のため10年ほど前からペーパーレス化を推進。すでに書類の8割ほどを電子化しているという。 「もともと『DocuWorks』は稟議書の処理などワークフローのデジタル化の一環で導入しました。うちの規模の会社でここまでITに注力する会社はまだまだ少ないほうかなと思います。営業など受注側で扱う注文書も毎月2000枚ほど届いていたんですが、いまはウェブ受注システムを入れて、お客さんに対応をお願いしている状況です。  自社商品の注文に関しては情報が定型的で、ウェブ化も比較的しやすいんですが、資材課が扱う注文書はなかなか難しい面もありますね。資材課が扱うものは取引先によって液体もあれば、板状の資材もあり、商品コードの桁数などもすべて違うので」  通信設備としてファックスを残し続けている背景には、単に取引先が高齢でファックスに慣れている会社が多いだけでなく、ファックスならではのメリットもある。 「ダウンタイムは全然違いますね。メールは年1~2回はプロバイダのシステムダウンがあるし、相手側のサーバーの都合でつながらないことも年に数回あるんですけど、ファックスは年間を通してまったく落ちないんです。ファックスって要は入力と出力が紙というインターフェイスだけが問題で。  そこがパソコンソフトの中で統合できれば、場合によってはメールよりラクに感じることもあります。通信設備としてのファックスは実は優秀だし、堅牢なシステムだと思います」

トータルコストはファックスのほうが高い

 IT化をなかなか進められない中小企業の中にはコスト面でハードルを感じている会社も少なくない。従業員約60名ながら年商32億円を誇るモリタ工業だが、そのあたりの兼ね合いはどう意識しているのか。 「むしろトータルコストはファックスのほうが高いと思います。ウェブはウェブでランニングにお金がかかるので、通信費などシステムにかかるコストはそこまで変わらないんですが、ファックスの最大のコスト要因は人件費なんです。  ざっと計算したら、紙で出力されたデータを入力し直したり、複合機まで歩いて行ったり、ファックス業務だけで月80時間くらい資材課の作業員一人に対してかかっていたんです。それがデジタル化である程度、削減できたのは大きいですね」
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ファックスに向いている業務/向いていない業務
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1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii

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