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今どきファックスを多用する会社の本音「実はメールのほうがシステムは弱い」

 株式会社ワーク・ライフバランスが昨年、行った調査によると、政府省庁の86%が日常的な連絡にファックスを利用しているという。DX(デジタルトランスフォーメーション)が取りざたされている昨今、「悪しき慣習」として何かとやり玉にあげられがちなファックスだが、それだけ多くの職場で定着している背景にはファックスならではのメリットもあるのではないだろうか。ITツールの導入で業務のデジタル化を図りながら、日常的にファックスを多用しているモリタ工業資材課の久永昌也氏にファックス業務の実態とその利点を聞いた。

ファックスと共存する働き方

久永昌也氏

久永昌也氏

 家庭用ガス給湯器を製造するモリタ工業の本社がある埼玉県川口市は、東京都大田区や墨田区などと並ぶ中小企業の多い製造業の街。古くからある工業地域で、取引先の会社は高齢化などの理由でIT化が進んでいない町工場も多く、業務でファックスを利用する機会が多いという。 「実務で社外とやり取りが多いのは顧客から注文をいただく営業側と、材料や部品を仕入れる購買側です。受注側はウェブ受注システムの導入を進めている段階で、いまファックスを主に使っているのは自社製品を生産するために原材料や部品の調達する資材課という部署になります」  資材課課長の久永氏は1日に10~20件ほどの注文書をファックスで送っている。 「私含めて資材課3名で、100社ほどの部品の仕入れ先とファックスでやり取りしています。コロナ以降、メール中心のやりとりを希望される会社さんも一部ありましたが、資材課のお取引先は地元の小さな町工場が多く、ファックスが一番使いやすいという会社さんがほとんどですね」

メールを送る感覚でファックス

 同社ではペーパレス化推進のため、2017年12月に社内システムとして富士ゼロックスの『DocuWorks』を導入。複合機と連動するかたちで電子文書と電子化した紙文書を一元管理するソフトを使うことで、パソコンで作成したファイルをそのままファックスできるようになった。 「メールを送る感覚でファックスができて、受信も自動的に専用のフォルダへファイルが入るので、パソコンで確認して紙へ出力することも簡単です。量が量ですし、『DocuWorks』導入前は注文書をいちいち紙に出力する手間もあって、ファックスの送信作業にはけっこうな時間が必要でした。  他部署も複合機は使うので、混雑時は順番待ちもよくありましたね。自分のデスクから遠目に様子を見て、複合機が空くタイミングを待つことも多かったです」
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メールよりも優れている面も少なくない
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