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東京五輪とコロナ第4波が重なる可能性。経済損失1.6兆円以上か

無観客で2.4兆円、緊急事態宣言でさらに喪失

五輪

昨年1月から広がりを見せた新型コロナは夏場には世界中に広がり、12月から今年1月にかけて第3波が到来。フランス、アメリカ、イギリスなどで爆発的に感染者を増やした(「Our World in Data」をもとに上昌広氏が作成)

「無観客開催になれば、テレビやハードディスクレコーダーなどの耐久消費財の買い替え需要が4000億円程度生まれますが、観光特需はゼロになるため、2.4兆円の経済波及効果が失われると試算しています。  加えて、緊急事態宣言が1か月続けばGDPを1.5兆円押し下げる効果がある。2か月なら倍です。五輪をつつがなく終わらせられたら、その後のインバウンド需要を喚起できる可能性もありますが、失敗すれば日本の景気回復はさらに遅れるでしょう」(民間シンクタンクのエコノミスト)  有観客で開催できても、五輪史上に汚点を残す可能性がある。スポーツライターの玉木正之氏が話す。 「2月にIOC(国際オリピック委員会)が発表した五輪観戦のルールブックでは、大声を出しての応援を禁止しているほか、応援歌を歌うのもダメ。唯一、観客に許されたエールを送る手段は拍手なのです。当然、アスリートのモチベーションは上がらないし、静まり返った会場の様子を放映したところで視聴率は上がらない。おそらく、世界新記録を更新する競技の数が、過去最低になるんじゃないかと予想しています。  なぜなら、海外選手はまともにコンディション調整ができないんだから。選手1万1000人、コーチなど関係者を合わせると5万人の外国人に大会のIDカードが発行されると言われていますが、それだけでは少なすぎます。あのカール・ルイスは常に30人以上のスタッフを引き連れて戦っていたんです。一人の選手につき3~4人のスタッフしか同行できないのなら、レスリングの選手はスパーリングパートナーを用意できないし、馬術競技では馬の管理を行うスタッフを揃えきれない。  唯一、ほぼ万全のコンディションで大会に臨めるのは日本人選手だけでしょう。そんな不公平な大会でメダルを競う意味があるのでしょうか?」

海外の方を受け入れる態勢が整っている病院は少ない

 仮に海外の選手やその関係者に“日本型コロナ”の感染が広まるようなら、目も当てられない事態に……。 「すでに日本医師会は来日する外国人が発症した場合の患者の受け入れ態勢について、医療崩壊の可能性を指摘しています。東京都は病床使用率が80%を超えた1月から1000床拡充しましたが、海外の方を受け入れる態勢が整っている病院は少ないのです。  政府は大会開催に1万人の医療関係者を確保する必要があるとしているが、その目途もまったく立っていない。大会関係者には4日に一度の割合でPCR検査を実施するとしていますが、新たな変異種を検出するにはウイルスのゲノム配列を解読するシークエンスという作業が不可欠。  それなのに、日本のシークエンス能力はいまだに週に800件しか検査できないという脆弱なものです。従来型よりも感染力が高まる傾向にある新たな変異種が登場するようなら、医療崩壊は避けられないでしょう」(上氏)
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東京五輪はその意義を考え直す契機になるかも
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