仕事

入社3か月で辞めた新入社員。同期4人で退職の記念撮影をする清々しさ

「前職の経験を活かしたい」気持ちはわからなくもないが…

介護 山本文乃さん(仮名・30代)が勤めていた高齢者施設では、当時、夜勤のみ勤務可能な人を募集していた。山本さんが、そこに応募してきた男性Tさんについて話す。 「ラフな服装で面接に来る人が多いなか、Tさんはきちんとスーツを着ており、話し方も礼儀正しくて好印象でした。介護に関しては未経験で資格はありませんでしたが『人の役に立つ仕事がしたい』という志望動機で採用はすぐに決まりました」  夜勤の仕事は主に見守り(※高齢者のそばにいて、いつでも援助ができる状態でいること)で、朝食の準備や翌日の昼食の下準備などが業務内容だという。 「朝食は日勤の食事担当の方が作ったものを、夜勤者が利用者の食事形態に合わせて提供することになっています。高齢者なので、例えば、一口大、刻み食、ミキサー食など決められた献立がそれぞれの方にあり、希望に沿って作るような感じでした」  初めはTさんも決められた通りに作っていた。しかし、前職が料理人だったTさん。次第にそのプライドが現れるように……。

元料理人のプライドが暴走

「介護食は、柔らかく食材も小さくしなければなりません。しかし徐々に見かけと味重視になっていったのです。野菜の切り方も花びらの形になり、『安い調味料だと味が落ちるから』と、勝手に調味料を持参してきたのには驚きました。規則で使用できないことになっているにも関わらず、ですよ」  料理人としての熱は上がる一方だったようで、フルーツも“見栄え”よく切れるようにフルーツ専用包丁を持参したり、料理も“出来立て”を最優先にしたかったのか、蒸気が出ているような熱々の状態で提供したり……とにかく自分が作った料理を「これで良し」と満足できるまでこだわっていたようだ。 「この状況は、さすがに良くないので施設長が直接指導したのですが『こんな劣悪な環境の施設、公表してやる』と激高し、1か月も経たずに退職となりました」  そんなに料理が好きなら料亭で働けばいいのに……と内心では思っていた山本さん。  職場にはそれぞれルールがある。「より良くしたい」と思う気持ちは間違っていないが、その仕事の“本来の目的”を見失ってはいけない。Tさんが料理人として活躍していることを願うばかりだ。<取材・文/chimi86>
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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