更新日:2021年05月31日 11:23
仕事

ウザがられず、愛され、慕われる。新時代の中年像をTKO木本武宏×原田曜平が探る

中年側が合わせることも必要

イカした中年

「『怒ることは非生産的』というのが若者の考え」と原田さん

木本:ただ、それが主流になると、先輩が後輩に本気で教えないわけだから、自分で動けるコはチャンスが増えるけど、動けないコはしんどいですよね? 原田:格差ができますね。ただ、今の若者には出口がたくさんあるんです。SNSを頑張れば月10万円くらいは稼げるし、就職先はいくらでもある。それに、昔は「言うことを聞けばご褒美をやるぞ」という関係が成立しましたが、今の40~50代は若者にたいしたご褒美をあげられない。言い聞かせられるだけの武器がない。 木本:こっちは「やってやった!」と思っていても、向こうからすると「フリスク1粒やんけ」ってなる。こっちからすると5粒しか持ってないうちの渾身の1粒だったりするのに(笑)。でも、普通に考えれば、フリスク1粒で後輩に言うこと聞かせられると思ってるヤツ、相当おかしいでしょ。 原田:そうそう。だから、先輩後輩の関係が成立しないんです。 木本:僕らの世代は一度入ったら事務所でも会社でも、ずっと同じところにいるのが当たり前でした。でも、今はまったく違って、事務所に所属していた芸人がフリーになるパターンも多い。若手はそれを知っているから、先輩後輩の関係を重視しないのもわかります。 原田:Z世代は帰属意識も弱くなっているし、同じ会社で一生過ごすという感覚もない。昔ながらの感覚を押しつけると逃げられるので、やはり中年側が合わせることも必要だと思うんです。悪くいえば“迎合”ですが、そればかりにならない塩梅が重要です。 木本:むやみに怒るのではなく、想像力を働かせることが大切なんでしょうね。「自分の中の理解は超えているけど、彼らの中ではそれが常識なんやろうな」と。

後輩に憧れられる中年とは

原田:10年後には、その若者の考えが常識になる。そこで僕らの常識を押しつけると「老害」と呼ばれます。ただ、木本さんみたいにアップデートできる人は少数で、多くの人は意識をアップデートできない。木本さんの場合、ご自身が意識を変化させる契機はなんだったんですか? 木本:先輩のさまぁ~ずさんの存在がめちゃくちゃ大きいです。あの人たちは本当にすごくて、一緒の時間が増えるたびに、「先輩」という枠を超えて、僕自身がファンになっていくんですよ。人間性なんでしょうね。そして、「もっとこの人たちと一緒にいたい」「もっといろんなことを教えてほしい」と思えるんです。 原田:20代の若手にもさまぁ~ずさんは付き合いやすい先輩だと思われているんでしょうか? 木本:そうだと思います。僕らの世代は、自分たちより先に入った人は無条件で先輩として接するのが当たり前。だから、自分も後輩から無条件で尊敬されると思っていたけど、さまぁ~ずさんに出会って、それは違うんだなと。 原田:そこが肝なんでしょうね。 木本:そう。だから、今の目標は、とにかく先輩として、楽しそうに生きていくことですね。さまぁ~ずさんのように、仕事でもオフでも毎日楽しそうにしていれば、その姿を見て、後輩も自然に憧れてくれる。自分から働きかけるのではなく、背中を見せて、自発的に憧れてもらうのが一番カッコイイ中年なのかなって思っています。 【芸人 木本武宏さん】 ’71年生まれ。お笑いコンビ・TKOのツッコミ。バラエティ番組を中心に役者業も精力的にこなしつつ、3月末からYouTube「TKO木本武宏のキモトゥーブ」も始動 【マーケティングアナリスト 原田曜平氏】 ’77年生まれ。博報堂ブランドデザイン若者研究所を退社後、マーケティングアナリストとして活動。著書に『Z世代』(光文社新書)、『ヤンキー経済』(幻冬舎新書)など多数 <取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/髙橋慶佑>
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