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発達障害の特性を“個性”に変えるテクニックとは。実践者が語る

「空気を読む」は一つのスキルに過ぎない

nayami

写真はイメージです

 自身の発達障害をプラスの形に活かすべく、銀河さんが現状を改善する手段のひとつとして取ったのが「パターン化」でした。 「発達障害の人は、一度覚えたパターンをやり込むのは得意な傾向があります。だから、トラブルが起こりがちなケースの対応策をパターンとして認識して、それを自動で繰り返せば、『仕事ができる人』という評価をもらうことも可能です。たとえば、発達障害の人は『空気を読む』のが苦手です。どんなに頑張って、発達障害でない人のように『空気を読もう』と思っても、なかなかうまくいきません。でも、パターン化を徹底すれば、状況を改善できます」  MRとして病院の医師たちを相手に営業を実践していたという会社員時代の銀河さんは、社内の空気が読めないことが原因で、上司や先輩にいつも責められていたのだとか。そこで、考えるようになったのが「なぜ空気が読めないことで怒られるのか」についてでした。 「営業に限らず、ビジネスをする上でコミュニケーションは必要なので、相手の気持ちを読み取る必要はあります。ただ、『空気を読む』のは、相手の気持ちをくみ取るスキルのひとつの手段でしかありません。それ以外にも相手の意図を読む方法はあるので、本来は『空気を読む』ことだけが正解ではないのです。  もちろん、空気を読めたほうが楽だし、正直、『私にもそのスキルがあれば……』とうらやんだことは何度もあります。でも、自分は空気が読めない以上は、別の方法で攻略するしかありません。逆に考えれば、『空気を読む』以外にコミュニケーションを円滑にする手段を探して、パターンとして習得してしまえば、直面している問題はだいぶ解決されるのではないかと気が付きました」

表情、足の向き、ボディランゲージで機嫌を察する

 そこで「空気を読む」ことをあきらめた銀河さんは、クライアントである病院の医師たちの感情を見極めるのに、「表情、足の向き、ボディランゲージ」という3ポイントを重視して、パターン化していくことを決めたのだとか。 「まずは、『表情』です。笑顔が続いているときは、機嫌が良いので、多少長話をしたり、契約に持ち込んでも大丈夫。反対に、話をしているときに、笑顔がなかったり、口角が下がったりしているときは、機嫌が悪いときなので、新製品の案内だけにとどめて、早めにその場から退散するようにしていました。  また、『足の向き』について。心理学的に人間は自分の行きたい方向に足を向ける傾向があると言われています。『早く話を切り上げたい』と思っている人は、足が出口のほうに向いていることが多いと言われるので、先生のつま先が出口のほうに向いているときは、早めに商談を切り上げていました。あと、『ボディランゲージ』に関しては、人は自分が興味のある話のときは、身を乗り出す一方、興味がないときは、背もたれにもたれかかったり、体を引き気味にしたりしていることが多いと言われています。そのほかにも、『鼻歌を歌っていれば機嫌が良い』『いつもより動作が粗いときは機嫌が悪い』など、その人個人に当てはまる無数のパターンを記憶することで、クライアントの機嫌を察知するようにしていました」
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