56年前の性的虐待疑惑で訴えられたボブ・ディラン、「なぜ今?」には理由があった
2016年にノーベル文学賞を受賞したボブ・ディラン(80)が、特大のスキャンダルに見舞われています。8月13日、匿名女性(68)が1965年に性的虐待を受けたとして、ニューヨーク州裁判所に訴えを起こしたのです。
当時、ディランは24歳で、女性は12歳。ディランのアパートで、アルコールや薬物を摂取させられた状態で6週間に渡り行為を強要されたと主張。女性の代理人は、ディランは「女性の信用を得て言いなりにさせるため、有名ミュージシャンという社会的ステータスを悪用していた」(The Guardian電子版 8月16日より)と語っています。
さらには、8月16日付のBBCニュースによると、ディランが“(女性の)身体に危害が及ぶ脅威”までちらつかせ、支配を強めていったのだそう。
この提訴に関して、ディランの代理人は「56年も前の出来事に対する訴えは真実ではなく、徹底的に反論していくことになる」とコメント。全面対決の様相を呈しています。
ネット上では、56年前の出来事に対する訴えに、疑問を投げかける声が見受けられました。昨年12月に、ディランが自作曲の著作権を300億円あまりで売却したのもあり、“お金目当てでは?”と訝しむ人も。真偽が定かでない段階ではありますが、そうした訴訟ビジネス的な側面も、ひょっとしたらあり得るかもしれません。
しかし、その一方で押さえておくべきは、2019年にニューヨーク州で施行されたthe Child Victims Act(児童被害者法)という法律の存在です。これは、幼少時の性的虐待で民事訴訟を起こせる時効を、「被害者が23歳になるまで」から「55歳になるまで」に大幅に延長した法律。
さらに、2020年8月13日までなら、どれだけ昔の事件でも訴えを起こせるという猶予期間がもうけられました。この猶予期間が、新型コロナの影響で2021年8月14日まで延長されていたのです。
つまり、ディランの件で被害を主張する女性は、とっくに時効だと諦めていたのが、今年8月14日までなら提訴できる。訴状は期限の前夜に提出されたそうです。
仮にディランのしたことが事実だとすれば、12歳の少女を心理的、身体的にコントロールしたうえで弄(もてあそ)ぶなんて、何十年経とうと看過できることではありません。
もちろん、MTVアンプラグドバージョンの「Like A Rolling Stone」や、自伝で語られた格言の数々は、いつまでも心に残り続けるでしょう。それでも、本当に言われるような性的虐待があったのであれば、その行いと作品との間に“やむを得ない軽蔑”というクッションを設けざるを得ない。
ファンとしては訴えが虚偽だと証明されるよう祈りたいところではありますが、だからといって現時点でその立場からディランを擁護するわけにもいかない。非常に苦しいスキャンダルなのですね。
いずれにせよ、当面は裁判の行方を見守るしかなさそうです。
12歳の少女を虐待?ディラン側は全面否定
時効でも提訴できる期限のギリギリに
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