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モロニー戦でも物議…那須川天心が「なぜか批判される」理由は?“二面性”が“悪い意味でのギャップ”と捉えられることも

那須川天心VSモロニー戦、物議を醸した試合結果

那須川天心

一夜明け会見を行った那須川天心 写真/産経新聞社

 “神童”那須川天心のボクシング転向6戦目、元世界王者の対ジェイソン・モロニーの試合が物議を醸しています。3-0の判定で天心の勝利を支持したジャッジに対して、モロニー陣営が公然と異議を唱えているのです。  試合後の会見でモロニー選手は一人のジャッジが92-98と大差をつけたことを「アンフェアだ」と批判。そして会見が終わろうかというそのときに、モロニー選手のマネジメントを担当するドン・マジェスキー氏が「一言いいですか」と割って入るサプライズもありました。マジェスキー氏は、「(日本のボクシング)コミッションはジャッジの教育をしてほしい。このような不公平な採点がないことを祈る」と、試合結果への不満をあらわにしました。  Yahoo! JAPANのトップにも掲載されるほどに議論を呼んだ今回の判定に、ネット上では意見が割れています。  まずはモロニー陣営の主張を支持するものから見ていきましょう。“天心のパンチは手打ちで見栄えだけだった”とか“モロニーの勝ちだった。地元びいきの判定でモロニーに申し訳ない”とか、厳しい声があがっていました。  また、今回は試合前から日本の一部ボクシングファンがモロニーを応援するという現象も起きていました。天心の実力に懐疑的な見方をするのみならず、その大きな人気ゆえに潜在的なアンチも少なからず存在することが浮き彫りになった格好です。

専門家はどう評価したのか?

 一方、元プロボクサーなど専門家は、一様に天心の勝利に納得していました。クリーンヒット、防御技術、リング上での主導権支配、いずれも天心が優勢であり、ワールドクラスのモロニーを相手にしてもスピードと技術は十分に通用していた、という意見がほとんどです。  筆者も採点をしながら観戦していましたが、96-94で天心勝利とつけました。特に印象に残ったのは、カウンターで合わせる左ボディブローと、第7ラウンドに見せたいきなりの美しい右アッパーカット。このあたりの距離感、タイミング、独創性は、単調で直線的なモロニーを圧倒していました。  ただし、どちらがより相手にダメージを与えたかという点では、実際に天心の動きが止まったり、ダウンしかけたりする場面もあったのでモロニーに分があったのも事実です。その印象からすると、ジャッジの採点は差をつけすぎなのではないかとも思いました。  プロボクシングが、単純なクリーンヒットの数よりも、強いパンチを相手の急所に当てることにより重きを置いた競技だという見方をすれば、現状の那須川天心にはかなりの物足りなさを覚えてしまう。  筆者は、天心の明確な勝利を支持しつつも、基本的には相手の動きにあわせたリアクションのアウトボクシングを軸にしたスタイルゆえに、今回の判定に対する騒動が起こっているのだと考えます。
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なぜ那須川天心はここまで叩かれている?
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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