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重馬場だと競馬はなぜ荒れるのか? 馬券戦略に役立つデータ検証

「強い馬」の多くは時計の速い馬場状態を得意とした馬

 では、これがなぜ荒れる要因につながるのか?  現在の日本の競馬では、芝の育成技術の向上により時計の速い決着が多くなり、そのため高速時計に対応できる馬から順に勝利していきます。そのため、世間的に「強い馬」と評されている馬の多くは時計の速い馬場状態を得意とした馬になります。しかし、時計の速い馬でこそ強い馬が、雨が降り、馬場が悪化して時計が掛かる馬場状態になるとどうでしょう? 今まで通りの走りができないことは想像に難くありません。
馬場状態

1番人気の馬場状態別成績

 芝レースにおける1番人気の成績は2018年初から2021年8月21日までで勝率33%です。しかし、重馬場に限定すると勝率が29.2%。不良馬場では21.8%まで下がります。馬場が悪くなることが荒れる直接的な原因ではなく、馬場が荒れたことによって世間が強いと思っている馬と問われている条件のミスマッチが荒れる結果を生んでいるというわけです。  ダートではその逆。通常上がりが掛かるレースが多いので、上がりが掛かる馬場状態が得意な馬が強いという認識の中、馬場が荒れて時計が速くなりミスマッチが起こるのが荒れる原因となります。  では、実際にどういう馬を狙うのがいいのでしょうか? それを紐解くために、もう一度先ほどの馬場状態別のタイムに戻って考えます。
上がり1位馬の馬場状態別成績

上がり1位馬の馬場状態別成績

差し馬が有利な状況に……

 具体的には上がり1位を記録した馬の成績が良化し、良馬場では勝率31.8%でしたが重もしくは不良では勝率が41.4%となります。良馬場の芝では特に高速馬場になると物理的アドバンテージから逃げ馬や先行馬が残るケースも見られますが、上りが掛かる状況になればそのアドバンテージはなくなります。そのため差し馬に有利な展開となります。  なお、上がり1位を出せそうな馬を狙うときは前走で33~34秒台の速い上がりを使っている馬ではなく、35~36秒台の遅い上がりで差し切った馬を狙いましょう。特に前走36秒台で上がり1位だった馬は重、不良で回収率は単勝、複勝とも100%を超えています。  一方で、ダートは若干ではありますが馬場が悪化するにつれて道中3ハロンタイムと後3ハロンタイムの差が小さくなっています。芝とは逆の傾向になるため、仮に後方から差す場合は芝級の34秒台の上がりを使えるような馬を選ぶのが理想です。  ただ、そんな脚を使える馬はダートでは少ないので、後方から追い込むには時計が速くて物理的に届かないという事態になります。そのため逃げ馬や先行馬といった物理的なアドバンテージを持つ馬が有利になります。また、時計面でロスを少しでも抑えられる内枠に入った馬の好走が多くなるのもポイントでしょう。
安井涼太氏

安井涼太氏

文/安井涼太
各種メディアで活躍中の競馬予想家。新刊『安井式上がりXハロン攻略法(秀和システム)』が11月15日に発売された。『競走馬の適性を5つに分けて激走を見抜く! 脚質ギアファイブ(ガイドワークス)』『超穴馬の激走を見抜く! 追走力必勝法(秀和システム)』、『安井式ラップキャラ(ベストセラーズ)』など多数の書籍を執筆。
Twitter:@RyotaYasui

安井式上がりXハロン攻略法安井式上がりXハロン攻略法

(秀和システム)

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