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『おかえりモネ』が“朝ドラの失敗作”の評価を覆したワケ。テレビマンが解説

リアルな心理描写とスローな伏線回収

 しかし、この朝ドラらしくないヒロインや周囲のキャラクターが抱える葛藤や心の闇が巧みなシナリオでゆっくりと回収されていくことでドラマとしての評価が上がっていったとA氏は語る。 「脚本を担当していた安達奈緒子さんは、緻密で繊細なシナリオを書く方で伏線回収も非常にうまい。だからこそ簡単に元気を取り戻す、仲直りするといった描き方はしなかった。  その典型的なシーンとして、東日本大震災発生時に津波を見なかったモネと津波を目の当たりにした蒔田彩珠さん演じる妹の未知とのギクシャクした関係性が修復されたのもドラマの中盤以降。  モネと他の登場人物たちが繋がっていく過程も非常にゆっくり描かれていて、非常にリアリティがあって深みのあるドラマになっていました。週ごとに成長を遂げて問題を解決していくというのが朝ドラの定石でしたが、『おかえりモネ』は新しい試みをしているなと感心しましたね」  この新しい試みが業界人やドラマファンに評価された要因であるとしつつ、その反面で視聴率の伸びには繋がらなかった点なのでは……とA氏はまとめた。

坂口健太郎演じる菅波先生に萌える人多数!

 キー局ドラマを手掛ける映像制作会社の女性社員・B氏にも話を聞いた。大の朝ドラファンである彼女は『おかえりモネ』を手放しで評価した。 「『スカーレット』で戸田恵梨香演じるヒロインの夫役を演じてブレイクした松下洸平さんなどが記憶に新しいですが、『おかえりモネ』では“変わり者”で不器用な医師・菅波を演じた坂口健太郎さんの存在が非常に大きかったのでは……と思います。モネと菅波のロマンスが動き出してから一気に面白くなっていった印象です。  口下手ながら夢を追うモネを必死に後押しする姿や実直なセリフが絶妙で、ツイッターで『俺たちの菅波』というワードが何度もトレンド入りしたほど。モネが何気なく口にした言葉から誕生日を割り出し、誕生日プレゼントとして参考書を渡すシーンは思わずキュンとしてしまいました(笑)」  イケメンながら不器用な役が似合う稀有な俳優・坂口健太郎演じる菅波とモネの甘酸っぱい恋模様も『おかえりモネ』の魅力だったようだ。
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永瀬廉の演技力と名ゼリフの数々
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