<マンガ>“ドラマ現場の待ち時間の悲劇・後編”「小野寺ずるのド腐れ漫画帝国 in SPA!」~第五十三夜~
―[ド腐れ漫画帝国 in SPA!]―
とにかくコミュ障の役者・小野寺ずる。ある民放ドラマの撮影現場、ちょっとした待ち時間でさえ、彼女は“上手に話せないなら、話せない感じのオーラを出せばいい”という理由で、壁に向かい一人台詞の練習をしていた……。そんな彼女のドラマコラムの後編です。はたして、ずるは撮影現場で笑顔になれるのか――。
【前編を読む】⇒<マンガ>“ドラマ現場の待ち時間の悲劇・前編”「小野寺ずるのド腐れ漫画帝国 in SPA!」~第五十二夜~
コミュ障女優に待っていた現実
「私も撮影現場で人の役に立ちたい」決心した私は考えた。
私が人の役に立てることはなんだろう。無表情で会話が下手、そのうえ相手によって態度を変えるこの姑息な人間には、飛び抜けた演技力も志もない。
それでも人の役に立てる部分はあるはずだ。私は変わる。与える側になる。そうして私は人の役に立てる自分の長所を考えることにした。
まず自分の長所を紙に100個書く心理カウンセリングの方法を試してみた。紙に書き出してみる。
・律儀
・前科がない
・健康
・比較的嘘をつかない
・信心深い
ここで筆は途切れた。5個。もうなかった。“真面目で神を信じる人間”ということだけがわかった。祈れということか?祈るだけではまた目を瞑ってうつむくだけだ、今と何も変わらないではないか。母に電話した。産みの親なら私の長所を知っているはずだ。
「あなたの長所ねぇ………………………………………………………………………。ひょうきん」
熟考した末にでた結論が、これだ。32年間、私のことを「ひょうきん」としか思っていなかったことがわかった。なるほど。“真面目で神を信じるひょうきん者”……。
……私は武器無し戦略皆無で、また撮影現場へ戻ることになる。この日はいつも優しい俳優Kさんのシーンが多めだった。緊迫感ある中、Kさんの難しい長台詞が続く。私はKさんの役に立ちたかった。あんなに優しくしてくれているのに私はKさんに何も返せていない。祈るだけではダメだ。与えろ。Kさんのために、何か……私の良いところを発揮して何か、考えろ……。
そうだ……“真面目”だ。
私はいつもカメラに映っていない時でもずっと芝居を続ける。舞台での演技経験が多いからか、映っていなくても同じ空間にいる全ては影響し合っている、という考えから律儀に芝居を続ける。
真面目というのが私の答えだった
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'89年宮城県出身の役者、ド腐れ漫画家。舞台を中心に活躍後、'19年に「まだ結婚できない男」(関西テレビ)で山下香織役、'20年「いいね!光源氏くん」(NHK)で宇都宮亜紀役など、テレビドラマでも活躍の場を広げる。また、個人表現研究所「ZURULABO」を開設し、漫画、エッセイ、ポエムなどを発表。好きな言葉は「百発百中」。
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