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過激な問題児なのに、愛してしまう“ぶっ飛んだ”映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』

やりたい放題の愛すべき悪趣味映画

 それは、本作が監督の嗜好が大量に詰め込まれたヤバい映画であるということ。一言でいうなら、愛すべき悪趣味映画なのだ(R15+の視聴年齢制限が設けられていることからも、その過激性が伝わってくることだろう)。ただ、その攻め具合が、本作の最大の魅力でもある。今回は、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』の他作品とは一線を画す“やりたい放題感”をご紹介したい。  まずはグロ描写について。頭が潰される、身体の一部がはじけ飛ぶ、肉片が飛び散るなどの人体損壊が、本作には冒頭から末尾までてんこ盛り(当然、大量に血が出る)。まさに「5分に一回」のペースで、笑ってしまうくらいに人がバタバタ死んでいく。「ぐちゅっ」とか「ボキッ」みたいな損壊音もたくさん聞ける。

すべてノリで行動する“極”悪党の彼らにしか解決することができないミッションとは?彼らを待ち受ける運命とは!?

 また、後半には超巨大なヒトデ型の“カイジュウ”が出てくるのだが、その際に大量の小型ヒトデが人々の顔に吸い付き、命を吸い取っていく。「『エイリアン』のフェイスハガーかよ!」とツッコみたくなるような、或いは『パラサイト』(98)のようなグロめのクリーチャー描写もたっぷり。「コンプライアンスなんかク●食らえ」とでも言いたげな、ゴア表現が嬉々として紡がれていく。そのため、ソフトな映画が好みの方はそれなりの覚悟で臨んでいただきたい(ただ、実にあっけらかんと過激描写が続くので、陰惨な気持ちになることはないはずだ)。逆に、いい子ちゃんな大作映画に食傷気味の方は「いいぞもっとやれ」なハイ状態に陥るため、気を確かに。

激アツの王道ラストに涙があふれる

半分人間で半分サメ、人間を食べることを常に欲している純真キャラのキング・シャーク

 この部分からもわかるように、本作は優等生的な“定石”をことごとく踏み倒していく「反逆性」に大きな特長がある。冒頭から「あれ、ポスターにいない……」というキャラたちがドヤ顔で主人公面して登場→秒で退場という人を食ったような展開、なぜかメンバーにサメがいる(しかも声優はシルヴェスター・スタローン御大!)、コスチュームが割とダサいキャラがいてそれを「便所頭」とツッコまれる、元々が寄せ集めの囚人たちのため、仲間意識が低すぎて食われかける等々、横道に逸れまくって「絶対に紋切り型にはしないぞ」という固い意志すら感じさせる。  ただ、それは大いなる前フリ。散々遊びまくった結果、本作は「悪党たちが正義の心に目覚める」という激アツな展開へとなだれ込んでいく。つまり、邪道から見事なカーブを描いて王道に合流するのだ。悪党どもが自らのトラウマや壮絶な過去を乗り越え、運命を受け入れて「仁義と流儀」を通そうと脅威に立ち向かっていくさまは悔しいほどにドラマティックで、不覚にも涙してしまうのではないか。ラストに待ち受けるオチも含め、全体を通して見るとカタルシスがしっかりと担保されており、観賞後には不思議な爽快感に包まれていることだろう。実に問題児な娯楽作、ぜひご家庭で楽しんでいただきたい。

ジェームズ・ガン監督作品 14人の特殊部隊(スクワッド)が挑む成功率0%のサバイバル・アクション! 世界を救えるのは、全員ヤバすぎる“悪党”だけ!

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物書き。’87年福井県生まれ。映画を中心に、アニメやドラマ、本、音楽などの取材やコラム執筆、イベントMC等を手がける。「装苑」「CREA」「CINEMORE」「シネマカフェ」「FRIDAYデジタル」「映画.com」などの雑誌、Web媒体に寄稿。ツイッター@SyoCinema
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