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“ほっこり日常”や“食”のドラマが今ウケるわけ。劇的な展開がなくてもいい

きっかけは『孤独のグルメ』? 食ドラマの影響

 とある連ドラを書く脚本家のA氏は、現在のゆるい雰囲気のドラマの隆盛はグルメものの成功を経て発展したものだと分析します。 グルメものとは、松重豊主演の『孤独のグルメ』(テレビ東京系)や小林薫主演の『深夜食堂』(TBS系/Netflix)、先日Season6の放映が発表された『ワカコ酒』(BSテレ東)など、今やおなじみのドラマジャンルとして成立したグルメドラマ。
『孤独のグルメ』

Blu-ray BOX『孤独のグルメ』(ポニーキャニオン)

『東京放置食堂』や『珈琲いかがでしょう』など、日常系にグルメ要素が少々入っているものもあります。 「食は日常の生活に息づくもの。グルメドラマは誰もが興味をひかれる食をテーマにすることで、物語を面白く動かすことにとらわれず、登場人物のキャラクターや生活をじっくり描くことができ、結果親しみやすくのんびりとした空気感を醸し出しているんです。  グルメドラマのような、劇的な展開がなくともテーマや質が良ければウケる成功例が作られた結果、空気感に重きを置いたドラマが多く作られるようになったのではないでしょうか」(脚本家・A氏)  今では「グルメドラマのパイオニア」ともいわれる『孤独のグルメ』は、何シリーズも続くほど大ヒットとなり、追随する作品が出て来たのは言うまでもありません。 「まだ定義があいまいですが、ゆるい日常系のドラマの中に、グルメドラマというジャンルが存在する状態だと思います。グルメドラマが落ち着いた今、様々なゆるくて癒されるドラマが作られはじめた、新しいフェーズに入った状態なのかもしれませんね」(脚本家・A氏)

なぜ今、癒し系日常ドラマがウケるのか

 しかし、ドラマに非日常を求める人や楽しむために見るような人からは「内容がない」「どう楽しめばいいのかわからない」「つまらない」というような声も。確かに、作品によっては冗長に感じ、そもそも「見たい!」という意欲をかきたてるものはないのかもしれません。  ただ現在は、ドラマはテレビでリアルタイム視聴すると言うより、web配信ドラマや、見逃し、サブスクで自分が見たい作品を好きな時に選んで楽しむ時代。まんべんなくウケる従来の作品より、「刺さる人に刺さる」コアなものの方が話題になりやすく評価が高いのです。
DVD-BOX『ワカコ酒 Season5』

DVD-BOX『ワカコ酒 Season5』(エスピーオー)

 そして、多くの日常系作品が30分前後というのも、スキマ時間や片手間に見るのにちょうどいい時間。少し画面から目を離したり、うっかり1話見逃したりしても、追いつけるゆるさがあるのも魅力です。新型コロナウイルスの流行や政治不信などで世が殺伐としているこの時代に、何も考えないで心を落ち着かせて見られる作品が求められているということもあるでしょう。  じっくりと、正座して登場人物のやり取りや映像を楽しむのもいいですが、お風呂時間ののんびりタイム、料理を作りながら、寝る前に何となく、スマホをいじりながら……など、どんな見方でも楽しめちゃうのが、ゆるい空気感のある作品のいい所。まさに、日常の中に溶け込ませることができます。  何気なく見て、ほっこり癒される日常系ドラマ。今後も多くの同様の作品が作られるようになるでしょうね。 <文/小政りょう> ※女子SPA!より
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