更新日:2021年12月14日 19:20
エンタメ

劇団ひとり、ビートたけしの若き日を映画化。“信者”以外にも伝わるように

大泉洋と柳楽優弥を選んだワケ

柳楽優弥

若き日のビートたけしを演じる俳優の柳楽優弥

――主役のおふたりについてですが、まず柳楽優弥さん。驚くほどたけしさんに同化して見えました。最初から柳楽さんが浮かんでいたのですか? 劇団ひとり:日本の俳優を全員一回当てはめるくらい、そこは慎重になりましたよ。色んな事を考えました。最終的に決めるポイントになったのは佇まいです。そこはもう芝居じゃ出せないんです。いくらやっても。醸し出す雰囲気というか、そこが決め手でしたね。僕から見ると、たけしさんはすごく孤独な人というか、天才がゆえの、誰とも分かり合えない感じがどこかにある。柳楽さんも同じ雰囲気をまとっているんですよね。すごく孤独で、時にはゾッとするような怖さみたいなものもある。その感じが、若い頃のたけしさんって、こんな感じだったんじゃないかなと思わせて。お願いして本当に良かったです。
大泉洋

「幻の浅草芸人」と称された深見千三郎を演じる大泉洋

――大泉洋さんは。 劇団ひとり:深見師匠もすごく悩みました。原作を読んだり、実際の深見師匠を知っている方は、大泉さんのキャスティングに一瞬戸惑うかもしれません。師匠はすごく強面な人だったので、最初は僕も強面な役者さんを考えました。でも、いまいちしっくりこなかったり、しっくり来過ぎだったりして。うーん、と行き詰まっていたときに、『青天の霹靂』を観返して、大泉さんの深見千三郎を観てみたいと思ったんです。 ――見事にハマりましたね。 劇団ひとり:確証はなかったですが、とにかく観てみたいというワクワク感がすごかった。僕が観たいんだから、きっとみんなも観たいはずだろうと思ってお願いしました。僕はもう何年も深見師匠のことを頭の中で勝手に思い描いてきて、言ってみれば相当美化していました。でも、それよりも良かったですね。大泉さんの深見千三郎には、可愛げもあるし、自分の美学を持っていて芯が通っていて。ステキでした。 ――最後の方に登場する、「何様だ」と聞かれて、師匠とタケシの答える「芸人だよ、バカヤロー」が心に残ります。 劇団ひとり:あそこはご本人たちも何回やったか覚えていないくらい色んなパターンで撮らせてもらいました。たぶんそれぞれ20~30テイクはやりましたね。あれは決めセリフなんですけど、あんまり決めセリフっぽく言ってほしくなかったんです。決めセリフとして書いてるので難しいんだけど、本人はそう思って言っているわけではないので。 ――最終的にはどういったテイクを使ったのですか? 劇団ひとり:深見師匠には最初はかっこいい言い方をしてもらったんですが、最終的に使ったのは、さも当たり前のように、「何、そんな愚問を俺に聞いているんだ」という言い方をしてくださいとお願いしたものだと思います。終盤でタケシが言う「芸人だよ、バカヤロー」も、いろんなパターンをやって、最初はシリアスにしたり、深見師匠の言い方を真似してもらったりしましたが、最終的に、それこそ照れ隠しじゃないけど、ちょっと笑いながら言ってるんじゃないかと思って「笑ってやってみてください」としたのをOKにしました。

「なるほど」と唸ったNetflix制作システム

劇団ひとり――Netflix作品だからということで意識したことはありますか? 劇団ひとり:冒頭部分を少し意識しましたね。この辺まで観て気に入ってくれた人は、最後まで観てくれるんじゃないかといったことを。Netflixって、新作がホーム画面に出てきますよね。それで面白そうだと思って一回はクリックしてみたりする。場合によっては2、3分で止めちゃうこともあるけど、逆に言えば3分だけでも観てもらえるチャンスがあるわけだから。どんなに頑張ろうが、観てもらわないことには始まらないですから。 浅草キッド――Netflix作品でも劇場公開も同時にされているものもあるので、個人的には映画館でも観たい作品です。 劇団ひとり:音にしても映像にしても劇場公開もできるようには作っています。 ――そうなった場合に備えてですか? 劇団ひとり:いえ。Netflixの作り方として、僕がなるほどなと思ったのが、てっきり一番多くの層に届くように最適化されたシステムのもとに作っているのかと思ったら、一番ハイエンドのユーザーに合わせているんです。大金持ちなんかは、でっかいスクリーンで、最新の音響システムで観る。その人たちにまず合わせて作る。 ――そこに合わせておけば、どんな環境の人が観ても楽しめる。 劇団ひとり:そうです。今の最新の映画館でも上映できるレベルに仕立てている。音質とかも含めて、かなり細かいところまでやっているんですよ。そうしたことに参加できたことも今回、嬉しかったです。
次のページ
時間が経てば勝手に大人になると思ったら大間違い
1
2
3
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi

記事一覧へ
●『浅草キッド』はNetflixにて全世界独占配信中
おすすめ記事