『二月の勝者』中学受験のリアルを突く柳楽優弥“黒木”の台詞が刺さりまくるワケ
中学受験をテーマにした日本テレビの連続ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』(土曜午後10時)の放送が残すところ1回となった。優れたドラマだったと思う。その理由を書きたい。
無料塾をドラマで初めて取り上げた。タイムリーだ。無料塾は教育格差を埋める切り札とすら言われている。
主人公・黒木蔵人(柳楽優弥)は中学受験塾「桜花ゼミナール吉祥寺校」の校舎長だが、無料塾「スターフィッシュ」の運営者でもある。学習塾の報酬を無料塾に注ぎ込んでいる。黒木の無料塾での元教え子で、現在は名門女子校1年生の大森紗良(住田萌乃)は第7話でこの塾の生徒をこう説明した。
「ここに来てる子って、みんな1人親家庭だったり、お金がなかったり、塾に通えない子供たちなの」(紗良)
現実の無料塾に通う生徒たちの家庭環境も同様とされている。誕生したのは1990年代で2000年代に入ると全国に広まった。講師役は主に大学生や元教師が務めている。運営はNPOなど団体が行なっており、黒木のように個人で運営しているケースは珍しい。
だが、黒木はそれを誇らない。第6話でこう言った。
「私は星を拾って、投げてるだけです」(黒木)
「スターフィッシュ」は和訳するとヒトデ。黒木は経済的事情で「地」に落ちてしまった「星」を、本来あるべき場所の「天」に戻しているだけだと思っているのだろう。
無料塾が出てきたことによって黒木がなんのために子供に勉強を教えているのかも鮮明になった。それは子供たちが夢を実現させるための手助けに違いない。もちろん、受験塾の最新事情もリアルに描かれている。子供たちは勉強漬けだ。「桜花」で算数と理科を担当する講師・橘勇作(池田鉄洋)は第7話でこう漏らした。
「小学生が毎日塾に来て座っているってこと自体が、すごくね?」(橘)
確かにすごい。昭和期を振り返ると、当時の大半の小学生は遊んでばかりだったのだから。ちなみに2021年度に首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)で私立中・国立中を受験する小学6年生は約5万人。首都圏の小6の数は計約29万人だから、6人弱に1人が受験に挑む。少子化でも受験戦争は激化の一途を辿っている。やはり現代性のある作品だ。
理由1 現代性がある
経済的事情で「地」に落ちてしまった「星」
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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